思い立ったのは、春の終わり。 羊の毛を刈りながら、サンタさんは思うのです。
「このフワフワの毛で、はなちゃんのマフラーを作ろう」
毛を紡いで、色を染めて、毛糸玉を作り。春、夏、秋、冬をまたいでじっくり丁寧にマフラーを編み上げます。クリスマスの夜、それを綺麗に包み、袋に入れて、長靴をはいて、外へ出て……「さあ行こう」。
絵本の中で、はなちゃんへプレゼントを渡すために、森を抜け、山をのぼり、街の中をひとりで歩き続けるサンタさんのその姿の小さなこと。だけど、思わず目を凝らして見入ってしまうのは、なんと全てが「刺繍」で描かれているから! サンタさんの赤い帽子も白いおひげも、森の木々も、静かな夜に並ぶたくさんの家も、全てが丁寧に繊細に、そして色鮮やかに縫い込まれているのです。
『クリスマス・イブのおはなし 3冊セット』、『サンタさんありがとう』などで人気の刺繍絵本作家長尾玲子さんの最新作は、ひたむきな姿が心を打つサンタさんが主人公。その一つ一つの画面の密度の濃さと相まって、ぎゅっと詰まった愛情を感じることのできる、素敵なクリスマス絵本です。
じっくりと、読む時間を大切にしながら味わってみてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
春の終わりに、サンタさんは羊の毛を刈りました。「このフワフワの毛で、はなちゃんのマフラーを作ろう」。冬までの長い時間をかけて、じっくりと丁寧にマフラーを編み上げたサンタさんは、クリスマスの夜、綺麗に包んだマフラーを持って出発します。山をのぼり、谷を越え、海を渡り、トナカイの引くそりにも乗らず、はなちゃんの家だけを目指して。ただ一人に向かうサンタさんのひたむきな愛情を、繊細な刺繍で描きます。
物にあふれている時代だからこそ
ワンクリックで簡単に物を買うことができ、
お家まで運んでもらえる便利な今だからこそ
一つのプレゼントに手間暇かけているサンタさんの様子や
一針一針思いが込められた刺繍でいっぱいの絵本に
心が打たれます。 (マドレーヌさんさん 30代・ママ 男の子3歳)
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