ためいきってどんな時につくもの?
授業参観に向けて、班ごとに図鑑を作ることになった「たのちん」こと田之上嵐太(たのうえらんた)。メンバーは、お調子者のコーシロー、気の強い小雪、しっかり者の七保、保健室登校をしている加世堂さん。たのちんの班だけなかなかテーマが決まらず、思わずためいき。それを見た加世堂さんが保健室でノートに「ためいきこぞう」のイラストを書くと、そのためいきこぞうが動き出して、たのちんに思わぬヒントをくれます。
そうや! 「ためいき図鑑」というのはどうだろう?
「ためいきつくのも、いろんな理由がある」そんなためいきこぞうの言葉をヒントに、早速班のメンバーに「ためいき図鑑」のアイディアを伝えると、みんな乗り気に。けれども図鑑の絵を描く担当のことで、たのちんは早くも大きな壁にぶつかってしまいます。小雪が絵を書きたいと言っているのに、加世堂さんに絵を書かないかと勧めてしまったのです。絵を書くことをきっかけに加世堂さんが教室に来られるように、という思いからの行動でしたが、それが小雪の怒りをかってしまって‥‥‥。
加世堂さんと小雪の間にはさまれて苦悩するたのちんのためいき、お母さんの言葉や態度に悩む加世堂さんのためいき、小雪のおこったためいき、クラスメイトの尾崎くんのためいきの理由や小石川さんのためいきについての考えなど、本書には子どもたちのたくさんのためいきとその理由が登場します。読者の子どもたちもすでに知っているためいき、知らなかったためいきの種類など、たくさんの発見があることでしょう。
作者の村上しいこさんは、絵本から幼年童話、小学校高学年向けの読み物、YA作品まで、ユーモアあふれる中にもさまざまな気づきや発見のある作風が魅力的な作家さんです。本作品は「ためいき」に焦点をあて、子どもたちが抱いているもやもやした気持ちや悩みに丁寧に寄り添っていきます。解決策が見つからない時、どうしたら良いのか? とたのちんが悩む姿には、共感しながら一緒に考える読者の子どもたちも多いのではないでしょうか。一見マイナスのイメージがあるためいきですが、可愛らしいためいきこぞうの存在や、たのちんとためいきこぞうとのやりとりが楽しく、どんどん読み進められるでしょう。中田いくみさんが描く登場人物たちにも魅力がいっぱい。くるくる変わる子どもたちの生き生きとした表情や、可愛らしいためいきこぞうの姿にも注目くださいね。
第68回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(小学校中学年の部)にも選ばれている本書。子どもたちは自分と同じような気持ちに出会ったり、これまで気にとめていなかった誰かの思いを知ったりと、様々な感情に出会うことでしょう。大人にとっても、子どもたちがどんなことに悩み、苦労しているのか、子どもたちの感情に目を向けるきっかけとなりそうです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
授業参観にむけて、たのちんの班は「ためいき図鑑」をつくことになった。 どんな時にヒトがためいきをつくのか調べて発表するんだ。 でもいっしょの班の加世堂さんは、毎日保健室に登校していて、教室にはこられない。 たのちんが、加世堂さんにも図鑑づくりに参加してほしいと思い、ある提案をしたところ、班のメンバーともめてしまい……もうためいきばっかり!
家族や友達との関係にゆれる子どもの気持ちを、鮮やかに描いた物語。
絵本、幼年童話、YAなど幅広いジャンルで活躍する村上しいこさんが描く、小学校中学年向けの物語。 保健室登校の少女をめぐって、悩む子どもたちの気持ちを、やさしくユーモラスに描きます。 絵は、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)の装画を手がけた、中田いくみさんです。
題名を含めて、とても斬新で面白い本に思いました。
「みんなのためいき図鑑」、どんな時に人はため息をついているのでしょう。
自分がため息をつく時ってどんな時だろう・・と改めて考えてしまいました。
共感できる部分も多いですね。 (まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子12歳)
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