ここは青い海の底、身を寄せあったクマノミ夫婦。2匹の下には、ひときわ目をひくオレンジの色。ぷちぷち、ピカピカ、まるで宝石! 2匹は、卵を守っているのです。
やがて生まれる赤ちゃんは、卵とは違って、透き通った銀色。星の粒のようなたくさんの赤ちゃんたちが、透明な海のなかを、きらきらと泳いでいく。なんて神秘的な光景でしょう。
かと思えば、こんな迫力のあるシーンも。 おおきく開けた口から、ドババー! パパの口からちっちゃな赤ちゃんを大放出する、ホシカゲアゴアマダイ。 まるでカンガルー!? お腹のふくろからひょっこり顔を出す、タツノオトシゴ。
海に住む生き物たちが産んだ卵と、それを守り、育む親の姿。そして、卵からかえったばかりの、ちいさな命。彼らにやどる生命の神秘を、ダイナミックに切り取った写真絵本です。
著者は、身近な自然への疑問をテーマにした絵本を多く執筆する、かんちくたかこさんと、海の生き物を捉えた大迫力の写真絵本で知られる、水中写真家の高久至さん。海の中でたくみに姿を隠す生き物たちの姿をユーモラスに映し出した、『かくれているよ海のなか』につづき、同コンビによる2冊目の絵本です。
「海の魚の多くは、お父さんが卵をまもるのはどうしてだろう?」という疑問をきっかけに、本書を手掛けたという高久至さん。 卵につきっきりで、水を吹きかけるもの。とにかくたくさん産み落として、ただようにまかせるもの。甲羅の隙間に卵を隠して、肌身離さず守るもの。本書に収録されている写真を見ると、卵の守り方もそれぞれにおおきく異なっているのがわかります。
「自然に対する「なぜだろう?」に、正解はないかもしれませんが、こうやって考えることは、とっても楽しく、たいせつなことだと思います」という高久至さんのメッセージのとおり、本書には知的好奇心をくすぐる疑問がいっぱい!
そのうえ、思わず口元ほころび目尻の下がる、とてつもなくキュートな赤ちゃんの写真まで載っているんだから、盛りだくさん。短い手足がチマチマとたよりない、ヤリイカの赤ちゃんに、ビー玉みたいにプクプクまんまるな、ハコフグの赤ちゃん……た、たまらない!
そんなのアリ!? と目を見張るようなおどろきの光景から、思わず口元ほころぶかわいい赤ちゃんの姿まで、みどころいっぱいの一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
口の中で子育てしたり、お腹に卵をくっつけて泳いだり…一生懸命に子どもを守る、けなげでたくましい親たちの姿、美しくかわいらしい、卵や子どもたちの姿を、ユーモラスな文と美しい写真で紹介。がんばれ!と応援したくなります。
以前、同じシリーズの『かくれているよ 海のなか』を読んで、透明感のあるきれいな写真に魅了されました。
そちらは擬態や補色をしながら海で暮らすいきものがテーマでしたが、こちらは海の中で生まれる命に注目しています。
たくさんの卵をまもる親の工夫。卵から生まれる赤ちゃんの愛くるしい姿。どれも生命の神秘のようなものを感じて感動します。
間近でこんなにも美しい写真を撮れるなんて、本当に凄いと思います。大人も楽しめる作品です。 (クッチーナママさん 40代・ママ 女の子18歳、女の子15歳、男の子13歳)
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