絵本を開き、見返しに並んでいるのは、見たことのない、でもとても魅力的なりんごの絵。いったいどんなお話が始まるのでしょう。
トラタのもとにおじさんから届いたのは、りんごの苗と図鑑です。りんごが大好きなトラタは、ベランダで苗を育て始めます。
「はやく、おおきくなあれ」
夏になった頃、小さな赤い実をくわえた鳥がベランダにやってきて、トラタをじーっと見つめると、そのまま飛んで行ってしまいました。気になったトラタは、その後を追いかけます。町はずれまで来て、さらにしばらく行くと、そこにあったのはたくさんのりんごの木! トラタは草の上に落ちたりんごを拾い、かじってみます。
「わ、すっぱい」
それは、お店で売っているりんごとは全くちがう味がして……。
迷い込んだのは、画家nakabanさんが色鮮やかに描き出す、不思議な庭。そこにあったのは、かつてはあった、古くてめずらしい種類のりんご。まっ黒りんごに細長りんご、しましまりんごにバラの花のような香りがするりんご。甘くも食べやすくもない、その味はトラタが知らないものばかり。けれどとても心惹かれるのです。それは本物だったのか、幻だったのか。
おいしいってなんだろう、良いりんごってあるのかな。これからりんごはどうなっていくのだろう。絵本の中で体験をしながら、りんごの過去や未来について、思いを馳せてみたくなるのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
大好きなりんごの木を育てているトラタ。鳥を追いかけて、りんごが実り輝くふしぎな庭に迷いこみます。「わっ、すっぱい」かじったりんごは、今ではめずらしい古い種類と知ります。次の日トラタはまた庭へでかけますが……。おいしいってなんだろう。食べものの過去・今・未来をもっと知りたくなる、あざやかで美しい絵本。
思いのこもった作品だと思います。
日ごろ口にするりんごにもいろんな品種があるのですが、どれも人間が品種改良して、口に合うように作ってきたものだと知りました。
トラタが目にした幻のりんご園にあったのは、野生のりんごだったのでしょう。
人はいろんな可能性を持っていて、努力によって美味しいりんごのように姿を変えていくのだと、語りたいのでしょうか。
ちょっと読み取ることは難しいように思えるのですが。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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