わたしたちは、ぐるぐるかけめぐる。海辺に生きる男の体を。男が夜見るその夢を。 わたしたちは、海。その男の手で、塩になる。
『あじわう絵本』シリーズ第2弾。お味噌の次は、お塩です。
舞台はとある海辺の小屋。汲みあげた海水を煮詰めていく、むかしながらの手法で塩をつくる製塩所です。そこで働く職人のワザと日常が、海の視点でおだやかに描かれています。
多くのことは起きません。一日汗をかいて働き、ぐっすりと眠る。友人たちと語らい、食事をする。しかし、海の目を通して語られる塩づくり職人の何気ない日常は、みずからの仕事への誇りと、働くことのよろこびにあふれています。 塩づくり工程を追いながら、それでいていっぺんの詩のような読み心地がフシギな作品です。
また、あとがきにもみどころが! この絵本に登場するのは、福岡県にある実在の製塩所です。樹木のトンネルを抜けた先にある、廃材でできた手作りの小屋。そこで目にした、むかしながらの塩づくり。まるで秘密基地に招かれ、そこでおこなわれる魔法をのぞきみているようなワクワク! あとがきに記される、著者である牧野伊三夫さんと塩づくりとの出会いは、読みごたえたっぷりです。
本作では、塩づくりの工程で出る灰を使って黒色の線を引いたそう。著者がどれほど製塩所の「塩男」に心惹かれてこの作品を描いたか、しみじみと伝わってくるではありませんか! 海を体に宿し、海と共に生きる「塩男」。だってそんなの、カッコイイに決まってるもの……!
(堀井拓馬 小説家)
自然豊かな岬のとったんで、海水をくみ上げ、塩をつくる人が、味見をきっかけに見る不思議な世界を描いた絵本。モデルとなった塩田では、組み上げた竹のやぐらに海水をかけ、太陽の熱や海風にさらして濃い塩水をとり、解体工事から出た廃材を燃やしたかまどの火で塩を炊いています。作者は、このときに出た灰に接着剤を混ぜたもので、原画のスミ線を描きました。あとがきでは、実際の塩作りも紹介しています。
「あじわう絵本」2。
奇妙な題名と原始的な絵に惹かれてセレクト。
主人公は海。
この視点が素敵です。
だからこそ感じる、おひさま、さかな、海草。
そして、塩男(製塩所の人)を介して塩になる様子を描いてあるのですね。
この構成はイメージが広がり、リアルに伝わってきます。
塩男が出来上がった塩をなめ、「おれは海になる」と語るセリフが印象的です。
命と海の関係性がすっと体感できます。
塩の見方が変わりそうです。
(レイラさん 50代・ママ 男の子30歳、男の子28歳)
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