見上げる木々の梢から、無数のどんぐりが降ってくる。 こんな光景から、この絵本は始まります。 地面に落ちた美しいどんぐりたち。しかし、ページをめくるたび、それらは森の生物たちに食べられていきます。 野ネズミが食べ、鳥が咥え去り、穴が空いたどんぐりの表面からは中を虫が喰ったことがわかります。 そこから生き残って根を出し芽吹いたどんぐりも、若芽が動物や虫に食べられ、ほとんどが死んでいきます。 けれども……。
この絵本は絵だけで進んでいきます。 どんぐりが落ちた地点を定点観測するように、めぐる季節を越えて、植物、生物たちの営みが描かれます。 精緻に描かれた画面に見入っていると、葉擦れの音や土の匂いまでしてきそうです。 モノクロと鮮やかな色彩の対比も、ハッと目を惹きつけられます。
生きようとする命が、他の命の糧になっていく。 ここに描かれる森の生命のやりとりに、誰もが圧倒されることでしょう。 命を見つめ、向き合い続ける作者・舘野鴻さんだからこそ生まれた一冊。 幅広い年齢の読者に手に取ってほしい絵本です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
どんぐりが梢から落ちてくる。どんぐりは生きようとしている。けれど、ほとんどは死んでいく。誰かの命は誰かの糧になっている。森はそのようにできている。たてのひろしが季節を越えてめぐる生命の気配を描く。
秋の季節にぴったりと図書館で見つけて読みました。
小6の息子は最近写実的な絵を描くのが好きで、
この絵本も「上手」と食い入るように
見ていました。
そして、「こわい」と言いました。
何がこわいのかと聞くと、
生きているどんぐりは色がついているけれど、
虫に食べられたり、だめになったどんぐりは
色がついていないと言うのです。
なるほど、よくよく見ると
今後成長が見られないどんぐりは
色なしでした。
私だけだとパラパラとしか見なかった絵本も
こんなふうに見ることもできるのかと
子どもの見方にハッとさせられました。 (まことあつさん 30代・ママ 男の子12歳、男の子9歳)
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