パレスチナにやってきたイギリスの映像記者マックスは、凧を作っている無口な羊飼いの少年サイードと出会い、友だちになる。実は、サイードは2年前におきたある事件以来、しゃべることができない。その事件とは…。
パレスチナのガザ地区。
カイト(凧)を作っては壁の向こうの入植地に飛ばしているアラブ少年のサイード。
彼はしゃべることができません。
パレスチナの記録映画を撮るために、現地を訪れたイギリスの映像記者マックス。
二人の出会いから、マックスの日記とサイードの心の語りが組み合わされて話が展開します。
サイードと親しくなったマックスは、ちょっとしたことで足を痛めてしまい、サイードの家で世話になることになりました。
そこで解ったことは…。
サイードの父親は収容所に入れられていること。
平和という言葉を書き記したカイトを入植地に飛ばし続けていたサイードの兄のマスムードは、サイードの前でカイトのめぐるトラブルで誤って射殺されてしまったこと。
兄の死から、サイードは言葉を失ってしまったこと。
アラブ人から見たとても重い話でした。
カイトを飛ばし続ける先には壁があります。
壁の向こうでは入植地で遊ぶ子どもたちがいます。
その中で、落ちていくカイトを回収している少女がいます。
少女の母親が殺されたことをサイードは知っています。
サイードの願いは、争いによる勝利ではなく平和。
話は、入植地側から揚げられた多くのカイトで素晴らしい結末を迎えます。
言葉は違っても、子どもたちの望む
カイトはまさに平和の象徴として描かれています。
モーパーゴの作品だから、実際の出来事からヒントを得た創作でしょうか。
ガザ地区の人々の姿を借りて語られるモーパーゴの姿勢。
作品ごとに強い問題提起を続けるモーパーゴですが、それぞれに感動があって好きな作家です。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
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