有名高校への入学に過剰な期待を寄せる両親。美術の才能を生かす夢を選べと諭す南先生。受験を前に心荒れる信一が、父のふるさとに家出し、祖父との触れ合いのなかで夢の意味を見出してゆく。
児童物語にしては、起伏があるドラマチックなお話です。
自分の夢を生かすべきか、親の言うように有名校を目指すべきか、受験生の信一が精神的に追い詰められて家出した先は、父親のふるさと。
自分を息子と間違えてしまう祖父の中に、親が息子を思う心を見つけました。
祖父は一人取り残されても、息子に期待しつつ懸命に仕送りを続けながら、息子が帰ってくることを心待ちにしていました。
そこにやってきた信一の父親もまた、親でありながら、息子としての自分を見つけました。
子どもに何を期待するのだろう。
自分の生き方は何だったんだろう。
ふるさとがあることも素晴らしいことです。
親子三代が中心ですが、この物語にはもう一人の登場人物が大きな存在です。
信一の通う中学校の南先生。
生徒たちを指導しながら、自分も生きる道をどこかで踏み外してしまったようで、落ち込んでしまった、等身大の人間です。
信一家族との関わりで、自分も自分の生き方を見つめ直すのです。
完璧な自分の人生なんてない。
人にも完璧な生き方なんてない。
自分の生き方について、考えさせられてしまいました。 (ヒラP21さん 50代・パパ )
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