アパルトヘイトが続いた南アフリカ共和国。人種差別や偏見に立ち向かい、オリンピックのマラソンで、同国の黒人選手として、初めて金メダルを獲得したマラソンランナーの物語。 南アフリカ共和国だけの問題ではなく、人類全体の問題として、いまだ克服できない人種差別。 その中で生きなければならないというのはどういうことか。 憎しみを乗り越えるには、人としての誇りを持ち続けるには、人種差別や偏見をなくすには、どうすればよいのか…。 主人公サムが選んだ道は、武力による闘争ではなく、走り続けることだった。 当時の南アフリカ共和国では、黒人であるというだけでオリンピックへの出場の道は断たれていたが、 サムは、あきらめることなく、ひたすら練習に打ち込み、黒人のために、家族のために、走り続ける。 人権、平和、そしてスポーツの力を訴えつづけた作者リオーダンの最後の作品となった物語は、 オリンピックの見方を変えてくれる感動の一冊。
南アフリカ共和国初の黒人金メダリスト、ジョサイア・チュグワネをモデルに作られたドラマチックな物語。
チュグワネの生い立ちとは異なる展開ですが、アパルトヘイトという過酷な人種差別制度の下に虐げられてきた黒人のことを思うと、うなるほど納得できるお話です。
黒人だからという理由で、集会に出た人々に浴びせられたのは銃弾の雨。
死んだ両親と、残された兄弟は様々な人生を歩みます。
そしてそれぞれがアパルトヘイトという偏見だらけの弾劾のもとに、自由を奪われ、虐げられます。
その中で、走ることをもって白人と闘おうと思ったサム。
サムの走りは、白人への抵抗であり、自分たち南アフリカ共和国の黒人の存在を世界に伝えるための戦いだったのです。
マラソンの好きな私には、マラソンの栄光物語と、アパルトヘイトへの抵抗とを盛り込んだために、物語はちょっと乱雑になってしまったようにも思えました。
チュグワネ本人にスポットを当てた物語があれば捨てがたいとも思います。
鬼気迫るレース展開を見ると、日本のランナーはハングリー精神ではかなわないなとも思います。
様々な思いを持ちながら、素晴らしい作品であることに違いはありません。
おまけの話ですが、実際のチュグワネもアパルトヘイトのために、虐げられた生活の中で、走ることの意味を感じた人です。
ちゃんとした練習よりもハングリー精神が、彼のエネルギーだったのです。
だけど手にした栄光のために、危険な目にもあったそうです。
人種差別のために、ちゃんとした教育を受けることができなかったから文字を読むことができませんでした。
マラソンの活躍で大きな富を得た後にしたことは、読み書きを習うことだったそうです。
このエピソードも子どもたちに伝えたいものです。
(ヒラP21さん 50代・パパ )
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