冬のある寒い朝、ひとりの赤ちゃんがカーネーションにくるまれて、警察に届けられた。ビリーと名付けられた赤ちゃんは、孤児院で育てられた。でもビリーは、孤児院でもはみ出しっ子だった。里子に出されても、いつもまた孤児院に送りかえされた。そんなビリーが、メリーおばさんの家だけからは追い出されたくないと思った。その家の近くに荒れ地があり、白鳥やキツネたちと仲よしになり、生まれてはじめてビリーは、愛することの喜びを知ったからだ。でもビリーの愛したキツネたちは町の人に殺されてしまった。一匹だけ残った子ギツネの命を守るため、ビリーと子ギツネの旅がはじまる。どこかにいるビリーの本当のお母さんのやさしい思いのように白鳥はいつもビリーを見守ってくれている。生長した子ギツネは自分のしあわせを求め、野性にかえっていこうとする。子ギツネと別れる日、愛することと愛されることの喜びと悲しみを知ったビリーに、やがてすばらしい幸せが訪れる。
モーパーゴの初期の作品ですが、人間愛と問題意識は今の作品につながる基礎をしっかりと感じさせてくれました。
捨て子の赤ん坊につけられた名前はビリー・バンチ。
人の愛情を知らないまま育っていきます。
そのうえ吃音は周りのクラスメイトからも先生からも馬鹿にされます。
そのビリーが心を許せたのは親を失った子白鳥。
その子白鳥が育っていくと、親を失い一人ぼっちになった子ギツネが唯一の友だちとなります。
文章にあるようにビリーも子ギツネそのものでした。
里親から逃げ出して、子ギツネとの流浪の旅。
暗い物語だと思っていたら、少年は人の愛を学び、子ギツネを野生に戻す転機がおとずれました。
最後まで読むと、氷のような世界が人の愛情で溶けていきます。
なんで絶版なのでしょう。 (ヒラP21さん 50代・パパ )
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