食って寝て、また食って…悠々自適に暮らすワニ。 「クロコダイルって知ってるか?ワニの中で一番でかくておそろしいんだぜ。」 そんな威勢のいい発言の後、あっという間に人間の網にひっかかって捕らえられてしまうワニ。 あれ、あれれ?
「こんなことさせやがって」 そう言いながらも首で輪っかをまわし、腹の上でボールを転がす。 「なさけねえ」 恥さらしとつぶやきながら、噴水広場で見事な芸を繰り広げる。 ギラギラした目をして悪態をつきながらも、その姿は愛嬌たっぷり。 このワニ怖いのか、それともちょっと抜けているのか…ギャップが可笑しくてたまらない。 仕方がないよね、ワニだって生きていかなきゃならないんだから。
でもね、そんなワニだって本気で怒らなきゃいけない時がある。 クロコダイルの仲間が店頭でカバンや靴になって飾られているのを見てしまった! 親父やおふくろが言っていた通りだ。やっぱり、ワニはワニらしく生きなきゃならない。 これまでの態度とは一変、くさりを切って街中で暴れまわるその姿はおそろしくて怖くて、 そして・・・かっこいい。
作者は『ねこざかな』や『ふうせんクジラ』の渡辺有一さん。 軽快な文章と色鮮やかな絵でユーモアたっぷりな世界を楽しんでいると、ふとドラマチックな展開に切り替わり、その魅力にあっという間に引き込まれてしまうのです。 ワニの尊厳を思い返し、まだ見ぬ楽園をめざして泳ぎだすハードボイルドなその姿。思わず息子に伝えたくなるよね。 「男なら、こんな絵本を読まなきゃね。ワニっほう!」
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
クロコダイルって知ってるか? ワニのなかでいちばんでかくて、いちばんおそろしいんだぜ。でも、人間につかまっちまった! エサのために芸をしてたけど、街でクロコダイルの仲間達の無残な姿を見ちゃったんだ・・・。
<担当者コメント> 自然の中で悠々と暮らしていたクロコダイルが、捕らえられて人の世界にやってくる・・・どこか悲しい設定を、軽快な文章が笑いに変えます。人間に悪態をつきながらも、生きるために芸をしていたクロコダイルが、ワニの尊厳を思い返し、ついに立ち上がります。まだ見ぬワニの楽園をめざして未知の海に泳ぎ出す姿は、きっと私たちの心にも大きく響くでしょう。男気あふれるワニの台詞と、生き生きとした表情に、引き込まれること間違いなしです。
クロコダイル、といえば高級品のイメージがあります。でも、クロコの製品を見ても、生きているクロコダイルのことを考えたことがなかったな、と反省してしまいました。
クロコダイルは、街中で芸をしているより、水辺でふてぶてしくしているほうが絶対サマになっています。
最後は、ヤッホーならぬ、ワニっほうと自然に戻っていくクロコダイルがしみじみしました。こってり深みのある色合いと、力強いクロコダイルの絵が楽しかったです。 (どくだみ茶さん 40代・ママ 女の子11歳)
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