南米の村に住む、女の子のアナは、本が大好き。 でも本を一冊しかもっていません。 よく勉強したごほうびに、先生からもらったのですが、その先生もひっこしていってしまいました。 村には、アナや小さい子どもたちをおしえる先生はもういないのです。 アナは、ヤギにえさをやり、市場で売るためのたまごをあつめ、畑で働きます。 つよい日ざしにアナは思わず目をとじながら、すずしいおうちで本(libro リーブロ)が読みたいなあ、と思います。
ある朝パカパカという足音とイーアー、イーアーという声が聞こえてきてアナは目をさましました。 外をみると、「ロバのとしょかん」(Biblioburroビブリオブッロ)の看板を抱えた男の人が、ロバ(burro ブッロ)に本をたくさんのせてやってくるではありませんか。 アナは家を出て丘をかけおります。 同じように、ロバと本を見つけた子どもたちが、坂をとびはね、畑をよこぎって集まってきます。
そうです、この絵本は、南米・コロンビア共和国の、移動図書館のお話(じっさいにあったお話)がもとになっているのです。 移動図書館といえば、マイクロバスやワゴン車などをイメージするかもしれませんが、南米のこの国ではロバ。 モデルになった小学校の先生、ルイス・ソリアノ・ボルケスさんは、アルファとベットというロバ2頭(文中のロバの名と同じ!)をつれ、畑や牧場をとおり、ひざの上まで水に浸かりながらの旅をして子どもたちに本を届けます。 あとがきによると、アフリカ・ケニアではラクダの図書館が砂漠の遊牧民に本を届けているし、スウェーデンのストックホルムでは船が島の人たちに本を運んでいるのだそうです。 移動図書館って世界中にあるのですね!
移動図書館ですから、本を貸し出したら、また次の場所へいってしまいます。 アナや子どもたちがうれしそうに木陰の移動図書館にあつまってくる姿。 「おじさん、いつくるかな」 次回の「ロバのとしょかん」を待ちわびるアナ。 フォークロアというのでしょうか、南米民俗風のかわいらしい絵に、アナがチャーミングに溶けこんでいます。 木の板に描かれたような素朴なニュアンスと、カラフルに彩色された世界観。 このなつかしいような絵が、本書の魅力のひとつでもあります。
未就学児には少しむずかしい内容かもしれませんが、学校にいって、世界のことを想像するようになると、とおい国の子どもたちも本を読んでいることを豊かにイメージできそうです。 文中にかんたんなスペイン語が登場するのもポイント。 本好きな南米の女の子に夢を運ぶ、ロバの移動図書館のお話は、学校などでの読み聞かせにもおすすめの1冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
アナはお話が大好き。毎晩弟にお話を聞かせています。でも、村には本が少ししかないので、もう全部読んでしまいました。ある朝、アナはひづめの音で目をさまします。たくさんの本をのせた「ロバの図書館」がやってきたのです――! 南米・コロンビアに実在する移動図書館と、今か今かと本を待つ女の子との出会いの物語。
このお話は、村に先生も本もないところにいる女の子が、ある日やってきたロバの移動図書館を心待ちにしているお話でした。いつも自分の持っているたった一冊の本を何回も読んでいたので、移動図書館、特にロバが引いてくるといった変わったもの、を心待ちにしている気持ちがとっても伝わってきて、見ているこっちも待ち遠しくなりました。 (イカリサンカクさん 30代・ママ 男の子8歳)
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