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「おそろしい予言」「見るなのざしき」ほか、世にもふしぎな話から人情味あふれる話まで、多彩でゆたかな日本の民話と伝説。
1970-74年年刊行「少年少女・類別/民話と伝説 全34巻」の中から怖い話を中心に選び、改定・改装。
編者:1904年東京生まれ。商事会社、区役所、図書館勤務の後、童話創作の道に入る。
挿絵:1914年大阪生まれ。繊細な画風で絵本、児童書を中心に幅広く活躍した。
2021年に読んだ。昔の雰囲気を生々しく伝える語り口、妖気が漂う素敵な絵。人々の生活がどんどん変わっていき、昔のことを体験した人がいなくなってきている現在、こういう本は貴重。
私は昭和生まれだが、恐ろしいくらい生活や常識、世の中の仕組みなどが変わっていくのを目の当たりにしている。最近作られる作品で、昔を舞台にしたものは、どこか現実味がない、ファンタジーの世界に感じられるのは、実際に着物を日常着として着て暮らした人が作ったのではないからだと思っている。
時代考証をして「正しく」作ると、面白くない、のだろうか、本当に?
この本の編者、挿絵担当者が生きた時代は、親や祖父母が江戸時代の生活を知っているような世代で、本書で出てくる民話の世界がまだ残っていたのだろう。だから絵に力があり、生き生きとしていて、地に足がついたしっかりとした印象を受ける。
昔の人の心意気や、考え方も感じられ、今とはだいぶ物の考え方が違うところもあるが、人間の愚かさや欲張りぶり、生き物をいつくしむ気持ちなどの共通点もある。
特に面白かったのは「小判とごんぞう虫」。
強欲な親類がとうとう欲の張りすぎで虫になる話だが、これなどは今も昔も変わらない浅ましさ。
「くずの葉ぎつね」は、安倍晴明の生い立ち。清明はいろんな小説や漫画などになっていて、今も人気者だ。
泣けるのは「たぬきの恩返し」。一生けん命に生きる尊さ、ずるをしないことや、相手の身を思いやるあったかさが心にしみる。
13話もあるが、面白くて一気に読み切ってしまった。
民話の力、おそるべし。
昔の雰囲気をつくりつつも、フォントや文字の大きさなどは、現代人に見やすく作られているので、中高年の読者にも優しいシリーズだ。 (渡”邉恵’里’さん 40代・その他の方 )
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