2011年3月11日。岩手県の海岸から400〜500メートル地点にある、鵜住居(うすのまい)小学校と釜石東中学校の子どもたちが、午後の授業を受けているとき、地震がおきました。 その直後、小中学生600人が山への坂道を2キロにわたり走って逃げました。 中学生は小学生と手をつなぎ、近くの園の園児たちをのせた台車をおしながら。 ほとんどの子どもが津波から逃げのびた、「釜石の奇跡」といわれた実話です。 これは、その実話をもとにした絵本です。
主人公の小学生、「ぼく」のじいちゃんは、漁師。 大槌(おおつち)湾の美しい海で魚をとって暮らしてきました。 絵本からはいろんなことがつたわってきます。 どこに逃げるか、一瞬判断に迷う先生。見つめる「ぼく」たちのまなざし。 窓の外で中学生が逃げはじめたときの、教室の空気。 「車に、気をつけろー!」「川がわは、はしるなー!」と中学生が叫ぶ声。 互いに励ましあいながら高台の“ございしょの里”へ、“やまざきデイサービス”へ、いや、もっと上の峠へ! 避難場所がどんどん高くなっていく緊迫感……。
親戚が被災し、釜石に通うようになった指田和さんが文を書き、本書はうまれました。 昔から津波におそわれてきた東北地方には“つなみてんでんこ”という言い伝えがあります。 てんでんこは、てんでんばらばらの意味。 家族が信頼しあって、いざというときは、ひとりひとりがしっかり逃げる。 けっして一家全滅などというつらくかなしい思いをしない、という意味がこめられているのだそうです。
釜石ではこのとき、それでも多くの方々が亡くなりました。家も学校も何もかも流されました。 伊藤秀男さんが描いた、圧巻の観音開きの絵の重みを、感じてください。 人間があらがえない自然災害。防災教育は、防災訓練だけではありません。 いざというとき、じぶんのいのちをまもるのはじぶんだと、子ども自身が信じることが大事なのではないかと思います。 「いのちさえあれば、これからなんだってできるものな」 ニッとわらった「ぼく」のじいちゃんの言葉と、描かれた海のうつくしさが、胸にしみます。 いつか遭遇する自然災害を、いきのびる勇気が、心のどこかに、芽生える絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
被災したことをわすれろ、という人もいれば、わすれるな、という人もいる。でも、ぼくはわすれないほうがいいと思う。
3.11の大津波を逃げた釜石の子どもたちの実話を描いた絵本です。小学生に読み聞かせをしたという方から、この絵本の存在を教えてもらいました。
東日本大震災のことは、忘れずに子供たちにもきちんと話しておきたいことではありますが、絵本にするにはあまりにもショックな出来事だと思います。でもこの絵本は、地震や津波の怖さよりも、子供たちや人々の強さや思いやりが感じられて、生きる勇気をもらえます。
私もこの絵本を読んでもらって、涙しました。自分で読むよりも、人に読んでもらいたい絵本です。ぜひ子供たちに読んであげてほしいです。 (クッチーナママさん 30代・ママ 女の子8歳、女の子6歳、男の子3歳)
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