「ちわこのよそったごはんが、いちばんうまい」 いつもそう言って、美味しそうにちわこがよそったご飯を食べていたお父ちゃん。 農家の大黒柱だったお父ちゃんは、幼いちわこと家族を残して亡くなってしまった。
やがて冬が過ぎ、庭の雪が溶けてきた頃、おじいちゃんは芽を出しているお米を手に言うのです。 「おまえの父ちゃんがつくった米の赤ちゃんだ。家族みんなでそだてるんだ」 ちわこは、お父ちゃんのことを思い出しながら健気に田植えのお手伝いをします。 そして、家族は毎月同じ日に僧侶を呼び、ごはんをふるまいます。これを作者は「つきごはん」とよびます。 お父ちゃんにしたように、炊きたてをこんもり、たっぷりとよそう、ちわこのご飯の美味しそうなこと。 そして、新米の実るころ、新しい命がやってきて…。
昭和30年代の佐渡島の農家を舞台に語られるこの物語。 大切な人を失いながらも、それぞれが支えあって強く生きていく家族。 そして、みんなの心の中に、炊きたてのご飯の中に、今も生きているお父ちゃん。 悲しいだけでない、あたたかくて味わいのある絵本になっています。 飯野和好さんの描く家族の表情もずっと心に残ります。
湯気の立つごはんの絵。その向こう側に子どもたちは何を見るのでしょう。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
昭和30年代の佐渡島。大黒柱の父を失った農家の一年を、少女の目から描きます。月命日に僧侶を呼び、ご飯をふるまう家族。新米が実る頃、新しい命が……。「つきごはん」は作者の造語で、月命日に僧侶にふるまう食事を意味しています。ご飯が大好きだった父親を思いながら、ご飯をよそう女の子が健気です。昭和の短編映画のように味わいのある絵本です。
全頁試し読みで読みました。おとうさんが残したおこめの赤ちゃんという言葉がとても気に入りました。あたたかい心に残る言葉で、ほっとしました。昭和30年の設定にとても親近感を感じて、自分のことのように瞑想にふけりました。突然、一家の大黒柱を失ってしまって可愛そうで、慰めの言葉がみつかりません。涙なしには、読めませんでした。新しい命の誕生で少し救われました。 (押し寿司さん 60代・じいじ・ばあば )
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