この絵本は、文字のない絵本。
しー。しずかに。 秋も深まる森の中。
声をひそめてのぞいてみれば、お母さんぐまと三びきのかわいいこぐまたちがいます。 抜き足差し足忍び足、好奇心のかたまり、小さいやんちゃなこぐまが、森の中に佇む一軒家へこっそりと忍び込みます。扉を開けると、しーん。薄暗い家の中を静寂が包みます。目を凝らして見ても誰もいないようです。はじめて見る家の中。はじめて嗅ぐにおい。なんだか、美味しそうなにおいが机の上から誘っています。チェックのテーブルクロスの大きな机の上には、スープボールが三皿。椅子に手をかけ机の上を見ようと背伸びするこぐま。思わず舌なめずり。あ、だめよ!・・・やっぱり。スープをぺろりと平らげてしまったら、もう誰にもこぐまの遊びをとめらない。次から次へと興味の対象がかわって、散らかしたり、壊したり。どんどんエスカレート。 そこへ突然帰ってきたのは、人間の家族。いつもと様子の違う我が家に気づいた人間たちは? そしてこぐまはどうなっちゃうの?
読み始めてすぐに、あれ?この物語、確かどこかで読んだことがあるような・・・。 それもそのはず、この絵本の元になっているのは、みなさんご存知の昔話『三びきのくま』なのです。人間の女の子が忍び込んだ場所が実はくまさんのお家だったというお話。その設定をさかさまにして、絵のみで構成された「文字のない絵本」としてこの作品が誕生しました。実際にアメリカで出版されたのは1976年。配色をおさえたシンプルな森の土のぬくもりを感じるような温かいタッチ。カメラを使って静止画をコマ撮りしたような、一瞬一瞬のこぐまの動きが見事に表現されています。だから、じっくりと絵を眺めるだけで、物語の展開を追うことができ、読み手がはじめて声に出すことで絵本の「時」が動き出すのです。
日本ではあまり馴染みがありませんが、文字のない絵本は、海外の学校で子ども達の物語を伝える力を養うためよく使われることがあります。お家では、親子で一緒に話しながら絵本を楽しむのもいいですし、子どもが想像力をふくらませて自分の言葉で大人に読み聞かせをするのもいいですよね。
(富田直美 絵本ナビ編集部)
森の中で一軒の家を見つけたこぐまは、誰もいないとわかるとそうっと家に入って、テーブルの上のスープを食べたり、子どもの椅子に乗って遊んだり!好奇心のおもむくまま、やりたい放題のこぐま。その無邪気な表情がかわいく魅力的な絵本です。
これは実は昔話「三びきのくま」の裏バージョンのお話。もともとのお話では、くまの親子のおうちにこっそり入り込んだ女の子が、勝手にご飯を食べ、ベッドで眠ってしまう…というストーリーですが、この絵本では、くまと人間が全く逆の設定で描かれています。 また、この絵本には文章がありません。「どうやって子どもに読んだらいいの?」と戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。でも絵を見ていくだけでお話は分かりますから心配はご無用!楽しげな子くまの表情を楽しみつつ、「次はどうなるかな?」とお子さんと会話しながら楽しんでくださいね。
サブタイトルに
「三びきのくま」のさかさまのおはなし
となっています。
さかさまにするとずいぶん雰囲気が違います。
もしかしたら文字がなく絵だけの絵本だから?
こぐまの無邪気な顔や、人間の怒り狂った顔など
妙にリアルな気がしました。
このお話を知ってなくても読めますが
知っていた方が比べることができて
面白いと思います。 (ジョージ大好きさん 40代・ママ 男の子13歳)
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