「い、いたいなぁ。おー いたたたたた・・・・・。」 ゆみちゃんが、お母さんのふでばこのチャックを開けて、中身を床にばらまいてしまった時です。 「えっへん、ぼく えんぴつ」「ぼくをつかって、すきなえをかいてくれない?」 お話ができる緑の鉛筆とお友だちになったゆみちゃん。 早速、お母さんから鉛筆を譲り受けると、毎日毎日、鉛筆に楽しくお話をしながら、たくさんの絵を描きました。 鉛筆の芯が丸くなったら、もちろん鉛筆を削らなければなりません。ゆみちゃんの絵が増えていくごとに鉛筆はどんどん小さくなっていきます。このまま使って小さくなってしまったら、「えんぴつさん」がなくなってしまう、幼いながらにそう感じたゆみちゃんは鉛筆を使わなくなってしまいます。 泣きながらとまどうゆみちゃんに「えんぴつさん」とお母さんから素敵なプレゼントが待っていました。
世の中には私たちの日常を助けてくれるたくさんの道具がありますよね。 その中でも、鉛筆は私たちが幼い頃に一番最初にお友だちになる道具かもしれません。 使えば使うほど小さくなる鉛筆。 鉛筆の芯は、身を削って文字となり絵となり子どもたちにたくさんの思い出を残してくれることでしょう。 絵本に登場するゆみちゃんのお母さんはものをとても大切にしています。その姿勢をみて育つゆみちゃんはきっとお母さんの真似をするはずです。 代用品が安価であふれている今の世の中だからこそ、その姿勢を大人の私たちも見習いたいものですね。 小さくなった鉛筆たちが誇らしげに転がっているふでばこがたくさん増えてほしいなぁ。
(富田直美 絵本ナビ編集部)
<なくなってしまう物への愛着心を通して、物を大切にすることの意味を語りかける絵本>ゆみちゃんは、お母さんから一本の鉛筆をもらいました。その鉛筆は、おしゃべりができるのです。ゆみちゃんと鉛筆は、お友達になりました。ゆみちゃんが絵を描くと、鉛筆はうれしそうに紙の上をすべっていきます。でも、しだいに鉛筆は短くなっていきました。そこで、鉛筆がなくならないように、もう絵は描かないと決めたゆみちゃんでしたが…
おかあさんのふでばこに憧れる、ちょっとおしゃべりな女の子ゆみちゃん。
ある日おしゃべり好きなえんぴつさんと出会い、とっても仲良しになりました。
ゆみちゃんとえんぴつさんは、毎日絵を描いて一緒に楽しい時間を過ごしました。
でも、ふたりで描いた楽しい絵が増えれば増えるほど、えんぴつさんは小さくなっていくのです。
どうしよう・・・
ゆみちゃんが直面した人生初めての大きな壁。
その壁を乗り越え成長させてくれたのは、おかあさんの優しさでした。
ゆみちゃんの楽しさ、嬉しさ、悲しさが、読むもの聞くものにそのまま伝わってくるような、いきいきとしたおなはしです。
絵も可愛らしく躍動的で、ゆみちゃんとえんぴつさんのおしゃべりが聞こえてきそうです。
無くなってしまうものを悲しむ子どもの視点を、得たものの大きさを喜ぶことに切り替える。
子どもの心に寄り添い愛情を持って子育てすることの大切さに、改めて気付かせてくれる絵本でした。 (ちゅら。さん 50代・その他の方 男の子17歳)
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