ハリエットは今、主人にくさりでつながれ南部の農場に売られようとしている。 そして、ここから逃げ出すことを心に決め、身一つで森を抜け、川を渡り、荷馬車に隠れ、ジャガイモの貯蔵庫に何日も潜み続けている。彼女の心が折れることなく、はるか彼方「自由の地」へと辿りつくことはできるのだろうか・・・。
人がほかの人を所有することができるという奴隷制。その苦難の深さは今の子どもたちには想像もつかないかもしれない。肌の色のみに基づいて奴隷にされ、重労働を強いられ、反抗をすれば罰せられ、読み書きすらも禁止されている。
この物語は、自らの手で自由をつかみ取っただけでなく、多くの奴隷たちを自由へと導き、その姿勢から「女モーセ」と呼ばれ、今もアメリカの人々の多くの指針となっている一人の黒人女性、ハリエット・タブマンの生きた道をもとに作られています。 はかりしれない不安と恐怖に襲われながら、それでも彼女の背中を押し続けたものは何だったのでしょうか。 ハリエットは神を深く信仰し、その声に耳を澄まします。他の人をも導こうとする迷いのないその姿には、信じるものがある人の勇気の大きさを感じ、道が見えている人の力強さに圧倒されます。
ハリエットを深く尊敬するという画家のカディール・ネルソンによって描かれたこの絵本は、子どもたちに多くの事実を知らせ、その衝撃の中にも勇気と力を分け与えてくれることでしょう。読み終えた子どもたちの心に、どんな困難にも立ち向かえる強さが育ちますように。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
19世紀のアメリカにおいて、自らの手で自由をつかみ取り、多くの黒人奴隷を救い出した ハリエット・タブマン。神の助けを信じ、力強く生きた黒人女性の物語を描き出す。
■コルデコット賞銀賞受賞 ■コレッタ・スコット・キング賞(画家部門)受賞
姜尚中氏 推薦!
♦おすすめのことば 姜尚中 (聖学院大学全学教授)
人類の歴史は、ただ支配し、勝ち残った強者たちの物語に過ぎないのだろうか。ならば、奴隷には、一切の物語が授けられることはないはずだ。しかし、神を信じ、神の声に耳を澄まし、神に導かれ、そして同じ奴隷たちを自由へと導いた「女モーセ」がいた。その名はハリエット・タブマン。彼女の苦難に満ちながらも、神の愛に包まれた物語は、現代の出エジプト記として、今も隷従と貧困に打ちひしがれた数多くの人々に読み継がれていくに違いない。きっとその中から第二、第三のハリエットが、神がかかげられた天の北極星をめざして立ち上がるだろう。「女モーセ」ハリエットの物語は今も生きている。
一時期伝記絵本について調べたことがあり、中でも注目しているのがこの絵を描いたカディール・ネルソンの作品です。
黒人の伝記を中心に描く彼の作品の多くは、この絵本のように人物のアップの表紙が多く、とても力強い印象があります。
ちょうど同じ時期に彼の『ネルソン・マンデラ』の伝記絵本を読みました。
『ハリエットの道』は、奴隷だったハリエットが、自ら脱出を図り自由を勝ち取り自分だけでなく、多くの人々を救出します。
悩み迷う彼女を支えたものは、神への信仰でした。読み終わった時に静かな感動がありました。
詳しい解説と、見返しには「自由への地下鉄道のルート」図があります。政治的に奴隷制度を解決することと同時にハリエットのような奴隷だった人たちが意識を変えて、自らの運命に立ち向かったことが今日に結びついていることを思う時、その道のりの長かったことを思いました。 (はなびやさん 40代・ママ 男の子12歳)
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