「だいたいね、車で行こうなんていうからこんなことになるんでしょ」「しょうがないだろ、みんなで新幹線にのったらいくらかかると思ってんだよ」 渋滞の車内で響くパパとママの言い争う声。 今までもふたりはしょっちゅう言い合いしていたけれど、今回はちょっと違う。 なぜってこの旅行は、最後の家族旅行だから。 旅行が終わったら、ママとパパは離婚して、家族じゃなくなっちゃうから。
小学校4年生の女の子・麦は、パパとママと弟の大地と4人で名古屋へ向かう途中、渋滞に巻き込まれます。 家族で名古屋へ行くのは、ママの妹の結婚式があるのと、ママの両親へ離婚の報告をするため。 いつものん気で先を考えずに行動するパパと、渋滞でイライラがつのるママは、車内で口を開けば言い合いばかり。 喧嘩なんて昔からなのに、どうして離婚するんだろう。 離婚ってパパとママだけで決めちゃうものなの? あたしの意見は関係ないの?
麦は、1週間前に大好きな友達「きょんちゃん」とうまくいかなくなってしまったことも心にひっかかっています。 両親の離婚のこと、友達関係のこと、どうしたらいいのかわからない、モヤモヤとやりきれなさが溢れ出そう。 渋滞から抜け出そうと高速を降りた麦たちに、さらにやっかいな旅のトラブルが重なって……。
車が進まないイライラ、車内の過ごし方やパーキングでの出来事、小さい子どもの手のかかり方……、描かれる渋滞の光景がなんともリアルで、思わず共感してしまう場面がたくさんあるのでは? 渋滞の車内という閉ざされた空間で、見えてくる家族の姿。 麦は、パパの昔の話を聞いたり、夫婦のこと、ママのひとりの女性・人間としての心の動きを、目の当たりにすることになります。 うまくいかないときだからこそ、親の素の部分が覗けたり、家族の絆を感じたり。 それは、麦にとって自分の心と向き合う大事な時間にもなったようです。
さて、大渋滞は、最後に麦たち家族にどんな景色を見せてくれたでしょうか。 日常の風景から家族や人間関係の心の機微を巧みに描く、いとうみくさんならではのリアリティのある物語。 生き生きと描かれる麦の心の成長もみどころです。 マンガや装画でも人気のイラストレーター、いつかさんの絵も可愛く親しみがあり、ハラハラするけれど読みやすく爽やかな読後感の一冊です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
離婚を決めたパパとママ。二人とともに、車で名古屋に向かう主人公・麦と弟の大地。麦は、両親の離婚の原因が知りたいけれど聞き出せない……、それに加えて、けんかをしている仲良しの友達のことが頭から離れず、モヤモヤとした気持ちを抱えながら、渋滞の車中を過ごす。
車中では、渋滞によってイライラがつのるママと、楽天的で先を読まずに発言してしまう明るいパパが言い合いを続けている。でも、それは昔からのことで、仲が悪いとはちがうのでは……と、麦は感じていた。渋滞回避のため、高速をおりて山道を走るなか、休憩のため外に出るが、ママがインロックをしてしまい……。
閉塞感のある渋滞の車中だからこそ生まれる団結力によって、家族の絆が再認識されます。家族のこと、友達のこと……やり場のない気持ちにどうしようもなくなっても、前を向いて進めば解決策が見えてくる――多感な時期にさしかかる少女の心の成長を描いた生き生きとした物語。
パパとママが離婚することになっている小学4年生の麦。
この立場は辛いな〜と思いました。
きっとお母さんお父さんにもそれぞれの想いと気持ちがあるのでしょうが、4年生で親の離婚を突きつけられるのは悲しいし寂しい切ないと私は思います。
今は離婚が多いとはゆえ、やっぱりね。。。
そう思ってしまうのは、私も実家の両親が私が子供の頃に離婚経験があるからかも知れませんが(笑)。 (まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子9歳)
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