
一人前って、なんだろう? おとなになったら一人前? なんでもひとりでできるようになったら一人前? 3匹のトガリネズミの子どもたちが、にぎやかに議論しています。
ここは、トガリィじいさんの家。 3匹は、トガリィじいさんのお話をきくのが大好きなのです。
今回、彼が語ってくれたのは、かつて出かけた大冒険のお話! 若きトガリネズミのトガリィは、一人前と認めてもらうため、トガリ山のてっぺんを目指したのです。
神秘のトガリ山。 そのあまりの高さから天に突き刺さっていると伝えられていますが、いつも雲がかかっているせいで、決して山頂を見ることはかないません。
なにかの「てっぺん」からでないと空に飛びたてないテントウムシのテント—— トガリ山に入った子どもたちの帰りを待つうち、岩となってしまった巨大なイワザル—— 首に鈴をつけた、見たこともない危険な謎の生き物——
トガリ山のてっぺんを目指す冒険は、まだ山に入ってもいないのに、奇妙な出会いとトラブルの連続!
作者は、絵本「14ひきシリーズ」で知られるいわむらかずおさん。 ちいさなトガリネズミ「トガリィ」の、天にも突き刺さる山のてっぺんを目指す大冒険! その旅立ちを描いた本作は、全8巻からなるシリーズの第1作目です。
自分の体がちいさくなってしまったと想像してみるのって、大人でも子どもでも、楽しい気分にさせてくれますよね。 本作のみどころは、そんなちいさな体のトガリィから見た、自然の描写。 まるで、ほんとうにちいさな動物の視点から世界を見たことがあるんじゃないかと思わせるようなみずみずしさと、その向こうに見え隠れする冒険の予感に、ワクワク! トガリィが歩く風の草原の風景に、ずっと目をこらしていたくなってしまいます。
各章の終わりには、トガリィじいさんの幼い孫たち3匹が、トガリィの話してくれた冒険について、ああでもない、こうでもないと、感想を言い合うシーンが挿入されます。 それがなんとも無邪気で愛らしく、しかし、ときにハッとさせられるような鋭い意見がとびだすことも—— まるで、トガリィの冒険について一緒に感想を言い交わしている気分にさせてくれる、楽しい演出です。
風や雲が生まれる場所であり、トガリネズミの故郷でもあると伝えられるトガリ山。 1巻では、まだそのふもとにも到着していません。 まだまだはじまったばかりのトガリィの大冒険には、この先いったいどんな出会いが待ち受けているのでしょう?
(堀井拓馬 小説家)

トガリネズミのトガリィじいさんが、若き日の冒険を孫たちに語って聞かせるものがたり。てっぺんはいつも雲にかくれてトガリ山。そのてっぺんを目ざし出発したトガリィは、草原で出会ったテントウムシのテントといっしょにのぼることにする。とんがったところから飛び立つのが好きなテントは、いつもトガリィの鼻の先や指の先から飛び立つ。
編集者コメント 自然の中に暮らし、生きものたちを主人公に作品を描き続ける絵本作家、いわむらかずおさんが、日本各地の野山を取材し10年以上かけて仕上げた長編物語のシリーズ。主人公は世界最小の哺乳類と言われるトガリネズミ。ふもとから森を抜け、やがて雲にかくれる山の頂上へ……
1章ずつ読み進みながら自然の壮大さや命の輝きをたっぷり味わっていただけます。 全8巻の全見開きに絵が入るほか、本の前と後ろにカラー口絵多数。1991〜1998年に刊行したシリーズの新装版です。
|