
昼下がり、のそりと起きだすクマダさん。窓のカーテンは閉めたまま。もう何週間もどこにも出かけず寝てばかり。引っ越した町に馴染めず、家から出られなくなってしまったのです。どんぐりの木箱に頭をつっこみ、ガリガリ、ボリボリ。
「はあぁ。もりのどんぐりコーヒー、また のみたいなあ」
ある日、クマダさんはどんぐりをひとすくいして火にかけてみます。それからカリカリカリと粉にして、トポポポポポとお湯を注ぐと、コーヒーの香りが広がりました。すると、喫茶店と勘違いした近所のハチダさんが家に入ってきて言うのです。
「ぼくに 1ぱい くださいな」
小さな声でコーヒー屋ではないことを伝えるクマダさんでしたが……。
コーヒーの香りがふわりと漂ってきそうなこの絵本。力強いタッチでぐりぐりと描かれたクマダさんや、夜空に浮かぶ星、個性的な近所の人たちのなんとダイナミックで魅力的なこと。コーヒーを入れる音や交わされる会話、クマダさんの控えめな笑い声のなんと優しく謙虚なこと。心まで包み込まれるようです。
同時にこの絵本は、引きこもっていたクマダさんが、近所の人たちとのささやかな交流を通して、少しずつカーテンをあけ、窓もあけ、ガチャリと扉をあけ外へと一歩踏み出していく、再生の物語でもあります。
コーヒーを淹れるように焦らず慌てず一歩一歩、ゆっくりと前に進めばいいんだ。そんな気持ちが子どもたちにも届いたら嬉しいですよね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

引っ越した町に馴染めず、家から出られなくなってしまったクマダさん。ある日、どんぐりコーヒーを淹れてみると、良い香りが広がりました。すると、喫茶店と勘違いした近所の人が、ガチャリとクマダさんの家に入ってきて…。

引っ越しってわくわく、どきどき、
楽しい気持ちと、不安な気持ち、いろんな感情がまざる出来事ですよね!
人間もくまも一緒だなって、ちょっとほっこりした
絵本です。
コーヒーを入れたことで広がる新しい出会いが、
なんだかとても素敵だと思いました。
かわいいお話です!! (スケボウさん 40代・ママ 女の子14歳)
|