![出版社からの紹介](/images/shoukai_shuppansha.gif)
山口から岡山に引っ越してきたぼくは、奉還町商店街のまんじゅう屋の息子、あつしと仲良くなった。奉還町は、大政奉還で配られた奉還金をもとに、武士が商売を始めたという歴史のある町だ。そこには、毎日金髪のマネキンたちといっしょにおっかない顔で店の前につったってる「レディースファッションべにや」のおっちゃんや、店であつかうすべての種を育てて観察し、記録をつけている「たねやのノダ」のおばあちゃん、若いころミュージシャンを夢見ていた「沖原整骨院」のじいちゃん先生など、個性的な人だらけで……。 子どもたちの目をとおして、お年寄りや彼らの人生を温かく描いた児童文学作品。
本の体裁はA5変判・厚表紙上製本(ハードカバー)
![ベストレビュー](/images/shoukai_bestreview.gif)
読書の普及の推進で文化の向上と社会の進展に寄与する目的で結成されたのが
「読書推進運動協議会」という組織で、
そこから成人の日に合わせて「若い人に贈る読書のすすめ」、
敬老の日に合わせて「敬老の日読書のすすめ」という
リーフレットが作成されている。
小さな冊子ながら、それでも24冊のおすすめ本が紹介されていて、
今年の「敬老の日読書のすすめ」の一冊に、
この村中李衣さんの『奉還町ラプソディ』がはいっていた。
挿絵を石川えりこさんが描いていて、シニア向けのおすすめ本ながら、
これはれっきとした児童文学なのだ。
岡山にひっこしてきた「ぼく」には、「奉還町商店街」でまんじゅう屋をしている
あつしという友達ができる。
この二人の小学生が主人公だが、
二人以上に活躍するのが「奉還町商店街」の老人たち。
そもそもこの商店街は、「大政奉還」の際に配られた奉還金でもとに始まった
歴史のあるところだが、
多くの店の主人たちはみな年をとっている。
商店街も寂れつつあるが、それでもみんなへこたれていない。
こわい顔をいた洋服屋のおじさんも、
年取った理髪店のいのうえさんも接骨院の先生も苗屋のおばさんも
みんな元気だ。
小学生の二人はそんな老人の元気にふりまわされる。
でも、そんなことを「ぼく」たちは嫌っていない。
むしろ、一緒に楽しんでいる。
そうやって読んでいくと、
この物語は児童書ではあるが、老人向けでもある
そんな贅沢なつくりになっている。
この本を読んだ子どもたちがおじいちゃんやおばあちゃんの笑顔を見たいと
言い出すかもしれない。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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