
現存する被爆建物「旧広島陸軍被服支廠」をテーマに、日本を代表する作家の池澤夏樹と黒田征太郎が言葉と絵と木工作品を交えた新しい絵本を作りました。主人公のネコとクスノキの対話を通して、戦争、平和、そしていのちとは何かを読者へと問いかけます。戦後77年を迎えて悲しみが風化しつつある中、ふたたび身近へと戦争が迫る今だからこそ、多くの人に手に取って頂きたい1冊です。
【あらすじ】1945年7月、煉瓦造りの大きな建物を見つけたネコは神社のクスノキに尋ねます。「あれはなに? あの大きな建物」「りくぐんひふくししょー」。兵隊の服を作り、穴が空いた服を繕い、再び兵隊へと着せる。なぜ穴が空いているの? 人も草木のように生えてくるの? ネコの疑問に答えながら、クスノキは人間がやがて引き起こすだろう凄惨な未来を予見して怯えます。そして、同年の9月。再会したネコとクスノキが、互いが目にした2カ月間の様子を語らいます。 *池澤夏樹による解説「ヒストリー陸軍被服支廠」収録

タイトルからは想像できない重さを、ダイヤローグと記されたページの「陸軍被服支廠」という言葉から感じとリました。
造形と絵を閲覧した後、「ヒストリー陸軍被服支廠」という重厚な解説にだめを押された感じで、心の中に重さが増して残りました。
どうして広島に陸軍被服支廠が作られたのか、戦地への物資輸送が陸軍だったのか、歴史的な背景を読み取りました。
以上に、軍服は繕い直す、兵士は産まれてくるという、物流のような感覚で戦争を考えたら、とても言い表せない恐ろしさが膨らんできました。
自分たちが犯したことが、一つにまとまって戻ってきたのが原爆だという発想にはちょっと疑問を持ちますが、戦争が肯定されるものではないのだと言うことだけは、嫌というほど感じる作品です。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
|