![みどころ](/images/shoukai_midokoro.gif)
宮沢賢治の童話世界では、ヤマナシは川を「ぽかぽか」流れてゆき、月光の虹が「もかもか」とあつまり、そしてクラムボンは「かぷかぷ」と笑います。 宮沢賢治童話を、アダゴオルシリーズで知られるますむらひろしさんがマンガで描くシリーズの最新作。 子どものような感性で紡がれるオノマトペが、なんとも耳におもしろい「やまなし」。 カニの子らが見る川底の世界を描いた本作は、宮沢賢治の鋭い観察眼によって、リアリティと幻想的な美しさとが奇跡的に両立している作品です。 それをますむらひろしさんがマンガとして描くと、思わず目を細めてしまうほどに説得力のある光の色彩がモノトーンなはずのページでまぶしくきらめき、ほんとうにカニの子どもから話を聞いて描いたかのようなあざやかさで物語が展開してゆきます。
一方、幼い兄弟が生と死の狭間でかいま見た地獄と極楽の風景を描く「ひかりの素足」では、その色彩はただうつくしいだけではありません。 きりりと清らかな雪山と、冬の太陽。内蔵にひやりとしみこんでくる暗い不気味さをもった地獄の世界。温かみまで皮膚に感じるような、きらびやかな極楽の都。 その三つの景色が子どもの目を通してていねいに描かれるなかで、地獄の描写はもちろんのこと、子どもにはどうにもしようのないおおきさで迫ってくる冬山の淡々とした恐ろしさには息も詰まります。
ちなみに「ひかりの素足」では、キャラクターたちはかなりきつい方言で話しています。ただ読み進めようとするとなかなか意味のとれないそれも、なぜだか声に出してみると、不思議とこれがすうと意味のしみこんできて、口にもなじむ心地のよい音なので実に楽しいのです。ぜひ、試してみてください。
(堀井拓馬 小説家)
![出版社からの紹介](/images/shoukai_shuppansha.gif)
1985年公開の劇場用アニメ「銀河鉄道の夜」で話題となった、ますむらひろし氏の描く美しいコミックスで宮沢賢治の名作が楽しめる大人にもおすすめの作品です。
「やまなし」
「クラムボンはかぷかぷ笑ったよ」という不思議なことばで広く知られる短編。サワガニの兄弟の目線で語られる川底の風景と、とつぜん飛び込んでくる外の世界との接触。そこには、容赦ない生死があり、そして豊かな恵みがある。兄弟のあどけない会話とともに、不思議な印象を残す、賢治童話の代表作にして、傑作!
「ひかりの素足」
一郎と楢夫の兄弟が吹雪の中で遭難する。二人は懸命に脱しようとするがうまくいかない。そのうちあたりは地獄の様相をおびはじめ、いよいよ追いつめられたところへ大きな青い瞳の人がすべるように現れた。ひかりの素足をもつその人の言葉は、まるで宇宙全体を包み込む言葉のようであった・・・。 。
![ベストレビュー](/images/shoukai_bestreview.gif)
コミック版、宮沢賢治童話といった感じでしょうか。
文章で読むのもまた想像力を働かせながら味わいながら読むよさもありますが、こちらは、ますむらひろしさんのイラストと共にわかりやすく物語の世界に入っていくことができる1冊になっているように感じました。
表紙のイラストからもわかるように、美しいですね。 (まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子9歳)
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