人気コンビがおくる、新作クリスマス絵本
- かわいい
- ギフト
- ためしよみ
絵本紹介
2022.09.22
池の上で大事そうに棒きれをかかえているカエル。もう一ぴきのカエルが「なんで そんな ぼうきれ かかえてるのさ?」と聞けば……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『2ひきのカエル その ぼうきれ、どうすんだ?』。いったいどんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
大きな池のまんなかの、スイレンの葉っぱの上で休んでいるのは、2ひきのカエル。片方のカエルが、なぜか大事そうに棒きれをかかえている。
「なんで また、そんな ぼうきれ かかえてるのさ?」
1ぴきのカエルが聞くと、これは犬よけ棒だと答える。犬が飛びかかってきたら、この棒でバンバーン!とやっつけると言うのだ。けれど、まわりには犬なんか来る気配もない。
「犬が池を泳いできたら、おれたち、くわれちまうぞ!」
それはそうだけど、だいたいこんな広い池のまんなかに、どうして犬が泳いでくるというのだ。それより、カワカマスやアオサギに食べられる心配をするべきなんじゃないか。
2ひきがそんな会話をくりひろげていると、背後には怪しい影が。そして、ふとした出来事をきっかけに、2ひきの周りではあっという間にとんでもない展開が……!
大きな池を背景に、描かれているのは2ひきのカエル。可愛らしいというよりもリアルな姿。場所だって珍しい訳でもなく、特別な場面転換だってしないまま。それなのに、2ひきの会話を聞いているだけで、なぜだかもう目が離せない。すっかり2ひきのカエルの世界に引きこまれ、笑ってしまうのだ。なんなんでしょう、この面白さ。大事件が起きているような、そうでもないような。
この絶妙なユーモアセンスで楽しませてくれるのは、『ひとりぼっちのかいぶつといしのうさぎ』などで知られる、イギリスの絵本作家クリス・ウォーメル。ケイト・グリーナウェイ賞最終候補、ネスレ・スマ―ティーズ賞銅賞受賞のこの作品を、さらに盛り上げてくれるのは絵本作家はたこうしろうさんによる軽快な翻訳。声に出せば、読むほうも読んでもらう方も気持ちの良くなるテンポなのです。
さあ油断をしていると、後半の息もつかせぬ大迫力の場面の連続についていけなくなりますよ! 心して読んでみてくださいね。
最後の余韻まで
2ひきのカエルの会話と表情。その組み合わせの絶妙なこと。起こるか起こらないかわからない出来事なのに、なぜか自信たっぷり。そんなカエルの態度に読者がほんの少し気持ちが傾きかけた頃、今度は本気で驚く表情を見せてくる。さっきはあんなこと言ってたのに! うーん、この出来事は「備えあれば、憂いなし」と言えるのか。カエルのことを笑っていいのか、どうなのか。最後の余韻までたっぷり楽しめる大満足の一冊なのです。
この書籍を作った人
1955年イギリスのゲーンズボロに生まれる。美術学校の絵画教師をしていた父のもとで、絵を描き始める。広告やデザインの仕事で頭角をあらわし、1991年、息子のために作った初めての絵本『動物のアルファベット』(未訳)で、ボローニャ国際児童図書展のグラフィック賞を受賞した。ナショナル・アート・ライブラリーズ・イラストレーション賞受賞、ケイト・グリーナウェイ賞ノミネートなど、絵はもちろんのこと、ひねりのきいた文章に対しても、高い評価を受けている。作品に『ひとりぼっちのかいぶつといしのうさぎ』『かしこいさかなはかんがえた』『ちいさなきしゃと おおきなおきゃくさん』『おおきなさんびき ゆうえんちへいく』『くまくんと6ぴきのしろいねずみ』(共に徳間書店)など。
この書籍を作った人
兵庫県に生まれる。絵本作家、イラストレーター。絵本に「ショコラちゃん」シリーズ(講談社)、『ゆらゆらばしのうえで』『ことりのゆうびんやさん』(以上福音館書店)、『なつのいちにち』(偕成社)、『むしとりにいこうよ』『みちくさしようよ』(ほるぷ出版)『雪のかえりみち』(岩崎書店)、『はるにあえたよ』「クーとマーのおぼえるえほん」シリーズ(ポプラ社)、『ぼくはうちゅうじん』(アリス館)、『はじめてずかん どうぶつ(1)(2)』(コクヨS&T)、童話の絵に『きかせたがりやの魔女』『あしたあさってしあさって』などの作品がある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。