絵本紹介
2024.02.15
スリスリゴロゴロ甘えてきたと思ったら、呼びかけにも応えないそっけなさ。こちらの都合などお構いなしに主張する強引さがあれば、まるで気持ちを読んでいるように静かに寄り添う謙虚さも。自由気ままでマイペース、甘えん坊なのに独立心があって、それでいてちゃんと優しい。ねこ好きさんに聞くその魅力は尽きませんが、「憧れの存在」という声が多いのは、動物の中でもねこならではのような気がします。ねこのようになりたい、ねこのように暮らせたなら……。
ねこに魅せられ共に暮らしている絵本作家さんは多く、ねこが主役の絵本もいっぱい! 数ある中からご紹介するのは、人と関わる姿が印象的なねこの絵本です。 大福に似ていて、ことわざにもなる。きょうだいがいてもひとり違う遊びをし、愛想なしのへそまがりなのに読み聞かせが好き。絵本の中には登場しないのに、しっかりとその存在を感じられる……個性豊かなにゃーにゃーにゃーが登場!
そもそもねこって性格が実にさまざまなのか、それとも関わる人に合わせて七変化するのか、謎や不思議も止まることがなく。飽くなきねこへの探究心、思う存分、絵本で満たしましょう!
出版社からの内容紹介
町のかたすみで女の子が見つけた子ねこは、豆大福にそっくり! 女の子が、和菓子屋さんのうちにつれて帰ると、子ねこはお店でふまれそうになり、通りへ逃げ出してしまう。ところが町では、おじいさんとおばあさん、小学生たち、よっぱらいのおじさんなど、子ねこを豆大福と見まちがえてつかもうとする人が、つぎからつぎへとあらわれて……。町のあちこちで追いかけられ、逃げまどう子ねこ。はたして逃げられるのでしょうか!?
みどころ
もしあのことわざの一部を、「ねこ」に置き換えたら? ねこ好きなら一度は考えたことがある(?)夢のような一冊が誕生しました。どのページをめくっても、ねこ、ねこ、ねこ、そして、ことわざだらけ!
息子が「 これ、うちでもよくあるよね!」と声を上げたページをどれどれとのぞいてみると、「ねこの腕おし」。抱き上げられたねこが、人間の顔に両方の前足をピーンと突っ張らせて、これ以上近づけるなと言っているかのようです。「かいねこに手をなめられる」とか、「ねこと背くらべ」とか、もっとねこと人とが仲良しな絵はあるのに、よりによってそれかいと思わずにはいられませんでしたが、まあ、そんなものですよね……。
作者は広瀬克也さん。『妖怪横丁』や『妖怪遊園地』などの妖怪絵本シリーズが人気です。あの個性的な妖怪たちのように、ねこたちもまたそれぞれ個性的に描かれています。模様だけでなく、顔立ちや体つきも一匹一匹違います。でも、寝ているときの顔はみんなそっくり、幸せそう。
絵本でことわざを勉強だ、なんて構えずに、新しいことわざが生まれたぞ!とおもしろがるくらいの気持ちで楽しく読んでみてくださいね。
この書籍を作った人
僕にとって、絵本をつくるということは「あ!いいな」の気分が形にできるかどうかということです。だから、きょうも「いい気分」を探しています。1955年東京生まれ。セツ・モードセミナー研究科卒。グラフィック・デザイナー、イラストレーター。初の絵本作品は『おとうさんびっくり』(絵本館)。他に月刊漫画「ガロ」に描いた漫画を絵本化した『さがしものはネコ』(架空社)、主婦の友あかちゃんえほんシリーズ『みつけたよ!』『まあだだよ!』(主婦の友社)、『ばけれんぼ』(PHP研究所)、『まよなかのほいくえん』(いとうみく/文 WEB出版)、妖怪絵本シリーズ『妖怪横丁』『妖怪遊園地』『妖怪温泉』『妖怪食堂』(絵本館)など。
出版社からの内容紹介
あるひ、いえにやってきた おれ。
そこには、うまれたばかりの おまえ がいた。
ここは、おれたちのなわばり。
一緒に成長する猫と子ども。
二人とも隅っこが好きで、いつもくっついていたけど、
気がついたら隅っこに おまえ がいないことが多くなって――。
当たり前に過ごしている時間が愛しくなる、大切な人に贈りたい絵本です。
この書籍を作った人
1974年神奈川県生まれ。東京藝術大学大学院在学中よりフリーランスで活動をはじめる。主な絵本に、『おすしのずかん』『パンのずかん』『ねこのずかん』「へんなえほん」シリーズ(白泉社)、「よこしまくん」シリーズ(偕成社)、『ぼく、あめふりお』(教育画劇)、『チュンとカァのじゃんけんぽん!』(PHP研究所)、『どうぶつまねっこたいそう』(交通新聞社)など多数。
出版社からの内容紹介
ニューヨークタイムズのベストセラー作家であり、コールデコット賞を受賞したイラストレーター、カーソン・エリスによる、子猫が家を見つけるのを手伝うために集まったニューヨーク近郊のコミュニティで起きた実話を基にした心温まる絵本。
この書籍を作った人
カナダのブリティッシュコロンビア州に生まれ、アメリカのニューヨーク州に育つ。子どものころからさかんに絵を描き、イラストレーターを志す。ロッキー山脈を抱えるモンタナ州の大学で絵画を学び、卒業後、ロックバンドのポスターのイラストを手がけて注目される。トレントン・リー・スチュワート作『秘密結社ベネディクト団』(ヴィレッジブックス)など児童文学作品の挿絵を多く担当。最初の創作絵本『わたしのいえ』(偕成社)が話題を呼ぶ。つづいて昆虫たちの言語を編み出した『なずず このっぺ?』(フレーベル館)はコルデコット賞オナーブックに選ばれて世界各国で翻訳され、日本の課題図書にもなった。
この書籍を作った人
1953年愛媛県生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業。3年間のフランス滞在を経て、絵本作家、翻訳家として活躍中。『なぞなぞのたび』(フレーベル館)でボローニャ児童図書展絵本賞、『あしたうちにねこがくるの』(講談社)で日本絵本賞、『あしたのあたしはあたらしいあたし』(理論社)で三越左千夫少年詩賞を受賞。訳書に『リサとガスパール』シリーズ(ブロンズ新社)他多数。
出版社からの内容紹介
リゼットおばあさんの家に住んでいる子ねこのぴっちは、ほかのきょうだいたちとはちがうことをして遊びたいと思いました。ところが、アヒルのまねをして池で泳ごうとして、おぼれてしまいます。
この書籍を作った人
1909−1958。スイスの国民的な画家。ベルンのギムナジウムを卒業後、ジュネーブの美術学校で装飾画を、チューリッヒの芸術学校で版画を学んだ。主な作品に『こねこのぴっち』(岩波書店)、『ブレーメンのおんがくたい』『たんじょうび』『長ぐつをはいたねこ』(以上、福音館書店)などがある。1947年から1957年にかけて、壁画の制作にも精力的に取り組み、チューリッヒやベルンの小学校、官庁、空港などに、多くの作品を残した。自身の3人の子どものために絵本を創作した。
この書籍を作った人
1907年埼玉県生まれ。1951年に『ノンちゃん雲に乗る』で文部大臣賞受賞。1953年児童文学に貢献したことにより菊池寛賞受賞。童話に『三月ひなのつき』『山のトムさん』、絵本に『くいしんぼうのはなこさん』『ありこのおつかい』(以上福音館書店)、翻訳に『クマのプーさん』『たのしい川べ』(以上岩波書店)など多数。
みどころ
日曜日の朝、パンケーキを作ろうとしたねこちゃんは、材料が足りないことに気が付きました。そこで友だちのうさぎちゃんとくまちゃんに足りない材料を持ってきてもらうことに。早速、歌いながらスクーターに乗ってやってきた陽気なうさぎちゃん。くまちゃんもウキウキした様子で到着です。
ねこちゃんとくまちゃんは、手際よくパンケーキ作りを進めますが、うさぎちゃんはハプニングの連続。でもそのハプニングだってお楽しみ♪ みんなで仲良く、作っていきます。そうしてできたパンケーキ。きっとお味は格別だったはず!
作って食べて、満足したねこちゃんとくまちゃんはちょっと一眠り。うさぎちゃんは眠らないみたいだけど、何か用事でもあるのかな?
子どもの頃、日曜日の朝にパンケーキが出てくると、いつものトーストとは違う特別感がうれしかったことを思い出す1冊です。最後に「ねこちゃんのパンケーキ」の作り方が載っているので、のんびりできる日曜日に親子で挑戦してみてくださいね。
みどころ
マックスは「ぼく」のねこ。ぼくは保護猫シェルターでマックスと出会い、一目で気に入って、家族に迎えいれました。
でも、マックスはぼくの家族をイライラさせる、あきれさせてしまうほどのへそまがりっぷり。とうとうママがシェルターの人を呼んでしまいます。慌てたぼくは、マックスを飼うときに約束した「毎日20分は本を読むこと」を実行し、なんとかその場を取りつくろおうとします。本を読むぼくの声にマックスはじっと耳をかたむけ、そしてついに……。
作者のソフィー・ブラッコールさんによると、アメリカのある動物保護施設には、子どもたちが猫を相手に音読の練習をするという取り組みがあるそうです。練習相手になった猫たちは、次第におだやかで社交的になっていったとか。そして、子どもと猫の間に友情が生まれて、猫が引き取られていくケースもあったそうです。
『へそまがりねこマックス』を読み終えた私の息子は、1歳になったばかりの猫を抱えると、キラキラした目で自室へと消えていきました。しばらくすると、息子の本を読む声が聞こえてきました。そしてさらにしばらくすると、猫が「出して!」と言わんばかりにドアを爪でカリカリする音が……。そう簡単にマックスのようにはいかないみたいです。
マックスほどではなくても、大なり小なり不可解なところのある生物、猫。猫と暮らしたがる人間もまた不可解な生物なのかもしれません。そんな猫と人間が、末永く一緒に暮らせますようにと願わずにはいられない絵本です。
この書籍を作った人
オーストラリア生まれ、ニューヨーク在住。絵本作家。絵本、児童書のさし絵を数多く手がける。『プーさんと であった日 世界でいちばん ゆうめいなクマのほんとうにあったお話』、『おーい、こちら灯台』(ともに評論社)で、コールデコット賞を2度受賞。そのほかの作品に『とびきりおいしいデザート』(文:エミリー・ジェンキンス、あすなろ書房)、『あかちゃんの木』(評論社)、『地球のことをおしえてあげる』(鈴木出版)などがある。
この書籍を作った人
1953年愛媛県生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業。3年間のフランス滞在を経て、絵本作家、翻訳家として活躍中。『なぞなぞのたび』(フレーベル館)でボローニャ児童図書展絵本賞、『あしたうちにねこがくるの』(講談社)で日本絵本賞、『あしたのあたしはあたらしいあたし』(理論社)で三越左千夫少年詩賞を受賞。訳書に『リサとガスパール』シリーズ(ブロンズ新社)他多数。
みどころ
この大都会に降り立ったのは、小さな子ども一人。知らない顔ばかりの中、大きな音や騒がしい人の声。きみはどんな気持ちでいるだろう。どうすればいいのか、わからなくなるよね。
でも、きっと大丈夫。そういう時は裏通りを通って、クワの木の下に隠れたり、暖かい蒸気が噴き出るダクトの下で、昼寝をするといいよ。公園に女の子がすわっていれば、ひざにのせてもらえるかもしれないよ。
吹雪で凍てつく街の中、その子が切なる思いで呼びかけているのは、行方不明になってしまった猫。状況を理解し、読者の誰もが胸をしめつけられる思いをする頃、全てをぎゅっと抱きとめてくれたのは……。
主人公の心情を表わすような景色の切り取り方。寒さが厳しくなっていく風景。道をたどりながら、見えてくる物語。悲しいけれど、あたたかい。まるで一本の映画を観ているような感覚になってくるのは、多くを語らないからなのか。シドニー・スミスが、初めて絵と文章の両方を手がけたというこの作品。美しい装丁も含め、自分だけの絵本として持っておきたくなる1冊です。
この書籍を作った人
カナダのノヴァ・スコシア州郊外に生まれる。ノヴァ・スコシア美術デザイン大学卒業。ジョナルノ・ローソン原案の文字のない絵本『おはなをあげる』(ポプラ社)で、カナダ総督文学賞(児童書部門)、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞など、さまざまな賞を受賞する。海辺の炭鉱のまちのいちにちを描いた『うみべのまちで』(BL出版)で、2018年にケイト・グリーナウェイ賞を受賞。2児の父。家族とともにトロントに在住。
この書籍を作った人
東京生まれ。同志社大学卒業。主な翻訳絵本に『しりたがりやの ふくろうぼうや』『ケーキがやけたら、ね』『ババールの美術館』『おねがい パンダさん』『女王さまのぼうし』『あたし、うそついちゃった』『たった ひとつの ドングリが―すべての いのちを つなぐ』『まほうの さんぽみち』『この まちの どこかに』「あおい ちきゅうの いちにち」シリーズ(すべて評論社)などがある。
出版社からの内容紹介
さとちゃんは空き地で
地下の街の商店街でめがね屋さんをしている
ねこのごーぐるに出会う。
さとちゃんの手作りめがねとごーぐるのお店のめがねを一度にかけると
嘘を見破る不思議な力が。。。
この書籍を作った人
1939年東京生まれ。東京芸術大学工芸科卒。主な作品に『14ひきのあさごはん』(絵本にっぽん賞)など「14ひきのシリーズ」、エリック・カールとの合作絵本『どこへいくの?To See My Friend!』(童心社/アメリカ、ペアレンツチョイス賞)、『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』(偕成社/サンケイ児童出版文化賞)、『かんがえるカエルくん』(福音館書店/講談社出版文化賞絵本賞)、「トガリ山のぼうけん」シリーズ、「ゆうひの丘のなかま」シリーズ(理論社)などがある。98年栃木県馬頭町(現・那珂川町)に「いわむらかずお絵本の丘美術館」を開館、絵本・自然・こどもをテーマに活動を続けている。栃木県益子町在住。
文:竹原雅子 編集:木村春子