のりもの好きな子大集合!
みんなに忘れられた古い家にやってきたのは、一人の旅人。荒れ果てたその家に、旅人は暮らすことにします。 毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介する絵本は、『みんなのいえ』です。二十数年の時を経て発売される、たしろちさとさんのデビュー作品。どんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
冬のある日。まちのはずれにある、みんなに忘れられた誰も住んでいない家に、一人の旅人がやってきて、その扉をあけます。真っ暗な部屋の天井は今にもくずれ落ちそうで、屋根にも壁にも大きな穴がたくさんあいていました。
「いえというのは すこしは きれいでないと」
旅人は家じゅうをなおしながら、この家で暮らすことに決めます。春になり、新しい旅人たちがやってくると、彼らもまた畑を耕し、レンガをつくり、はたらきながら暮らすことになりました。夏に新しい旅人たちがくると、部屋の中に窓をつくり、家の裏に井戸を掘り、秋にやってきた旅人たちとは、おふろをつくり、小麦粉をひき。10人の旅人たちが暮らす家は、少しずつ明るく快適になっていきます。
食卓にはみんなの座る椅子が並べられ、やぶけたズボンをなおし、畑でとれた野菜や小麦粉で料理をすると、さあ「みんなのいえ」のパーティです!
旅人が、ふぶきの中をさまよううちにたどり着いたのは、北風が吹き抜けるボロボロの家。
旅人たちはみんな、はたらきもの。古い家の土台からしっかりと作りなおしていきます。
まだまだ快適とは言えないけれど、暮らす人が増えていくたびに、少しずつ家が生きかえっていくようです。
たしろちさとさんの絵本デビュー作として2001年に発表されたこの作品。新たに描き下ろされた絵も加わり、二十数年の時を経て、単行本として発売となりました。そこに暮らす一人一人が工夫を凝らし、まわりの自然を生活に取り入れ、遊び心やアイデアがつみかさなっていき、毎日少しずつ変化していく「みんなのいえ」。こんな風に暮らしながら家が出来上がっていくなんて、理想的! どのページを眺めていても、飽きることがありません。まさに世界にひとつだけの家。
また次の年になったら。新しい家族が増えたら。あるいは、もし自分がこの家に住むとしたら。このお話には終わりがありません。「みんなのいえ」の想像はふくらんでいくばかりですね。
もし「みんなのいえ」で暮らすとしたら
理想の家ってどんな家でしょう。どんな家に住みたいかな。そんなことを考えた時、思い浮かべる家は一人一人みんな違うはず。とても大きな家を思い浮かべる人もいるでしょうし、とにかく便利な家がいい人もいるでしょう。この絵本に登場する家も、一つの答えです。そこに暮らす人が息を吹き込んでいく家です。暮らしに合わせて変化していく家です。こんな家のつくり方は、現実にはなかなか実現できないかもしれません。でも、想像するだけでも楽しいものです。もし「みんなのいえ」で暮らすとしたら、どんな部屋をつくろうかな……。
この書籍を作った人
東京都生まれ。大学で経済学を学んだ後、4年間の会社勤めを経て、絵本の制作を始める。世界的編集人、マイケル・ノイゲバウアーが見出し、「ぼくはカメレオン」で世界7カ国語同時デビュー。『5ひきのすてきなねずみ ひっこしだいさくせん』で2011年日本絵本賞を受賞。作品に、『ぼくはカメレオン』(グランまま社)、『すずめくんどこでごはんたべるの?』(福音館書店)、『くんくん、いいにおい』(グランまま社)、『ポレポレやまのぼり』『どうぶつどんどん』(大日本図書)、『はなびのひ』(佼成出版社)、『ぼくうまれるよ』(アリス館)などがある。神奈川県在住。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。