ディズニープリンセス じぶんもまわりもしあわせにする おやくそくブック(Gakken)
SNSで話題!すてきな大人になるために大切にしたい「おやくそく」を紹介する絵本。
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インタビュー
2024.12.17
絵本ナビと講談社の共同開催で新設された『読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』。その第1回の作品募集が2024年11月1日(金)よりスタートしました。『読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』は、いま本当に「読みたい」「読んであげたい」絵本を、あなたの手で創り、あなたの目で選ぶ。スマホやタブレット、PCからだれもが気軽に参加できる、新しいスタイルのデジタル絵本コンテスト。現在、コンテストにより多くの方に応募していただけるように、デジタルお絵描きアプリ「CLIP STUDIO PAINT EX」の協力を得て、無料で提供しています。
※第一弾の配布は完了いたしました。第二弾の配布は2024年12月20日を予定しております。(先着順200名となります)
そこで、この連載「絵本ナビ編集長イソザキの『あたらしい絵本大賞ってなに?』」では、新しいテーマとして「CLIP STUDIO PAINT」を実際に使われている作家さんお二方に登場していただき、さまざまなお話を伺っていきます。3回目には使用している様子のご紹介も。絵本作家を目指されている方にとって、きっと具体的なアドバイスがたくさん含まれている内容になっているかと思います。お楽しみください。
「CLIP STUDIO PAINT」ユーザーインタビューは全3回。最初に登場いただくのは、マンガ家・絵本作家・イラストレーターとして活躍されているながしまひろみさんです。絵本作家になるまでの貴重なお話を伺いました。
ながしま ひろみ
北海道生まれ。マンガ家、イラストレーター。 著書にマンガ『やさしく、つよく、おもしろく。』(ほぼ日ブックス)、 絵本『そらいろのてがみ』(岩崎書店)、マンガ『鬼の子』全2巻(小学館)、『わたしの夢が覚めるまで』(KADOKAWA)。 そのほか、児童書では『ゴリランとわたし』(岩波書店)など、書籍の装画・挿絵も数多く手がける。
――ながしまさんは、作品づくりのどの過程で「CLIP STUDIO PAINT」(以下「クリスタ」)を使っていますか?
私の場合は漫画も絵本も、ラフと下書きは「CLIP STUDIO PAINT」で描いて、着彩や仕上げのときに「Adobe Photoshop®」や色鉛筆などのアナログの画材を使っています。
――デジタル制作を取り入れたきっかけを教えてください。
手描きのときには大量の紙ゴミが出ていたので、デジタルを取り入れてゴミを減らしたいと思ったのがきっかけです。最近、漫画はフルデジタルにしてもいいなと思っていますが、正直まだアプリを使いこなせている状態でなくて。
絵本は、自分が描きたいと思っている絵をデジタルでどうやって描けるのか、正解がまだ自分でつかめていないので、これから勉強していけたらと思っています。手描きも好きですし、原画展をやれるといいなと思っているので、やっぱり手描きの原稿があるといいのかなという思いもあり、今は手描きの工程を残しています。
――ながしまさんは漫画家としてのデビューが先ですが、どのような経緯でデビューしましたか?
デザイナーとして会社に勤めていたころに、「ほぼ日の塾」という無料のものづくり講座があることを知り、仕事の役に立つかもしれないと通い始めました。その「実践編」でエッセイを書いたり、自分でものづくりをする課題が出されたりするのをこなすのが、すごく楽しかったんです。
昔、漫画を描いていたことがあったので、自由課題のときに「漫画を描こう」と思って描いたら、「連載してみませんか」と声をかけていただいて。約2年間「ほぼ日刊イトイ新聞」に連載したのが、漫画『やさしく、つよく、おもしろく。』(2016〜2018年「ほぼ日刊イトイ新聞」連載。単行本/ほぼ日ブックス)です。
――ながしまさんが、絵本作家になったきっかけはなんでしたか?
漫画とイラストの仕事をしているときに、絵本の編集をしている方が「なにか描きませんか」と声をかけてくださって、『そらいろのてがみ』(岩崎書店)で絵本デビューしました。ですから、絵本作家を目指したというよりも、編集さんに導いていただいたという感じですね。
出版社からの内容紹介
ゆきちゃんのところに、もうすぐ春がきます
ゆきちゃんがポストをのぞくと、空色の封筒に空色の便せん。
書いてあるのはたった一言
「もうすぐはるがきます」。
季節のうつろいを柔らかな感性でえがく、ハートフルなお話。
――デビューした後、次の作品を出すまでの間で大変だったことはなんでしたか?
知識がないまま漫画や絵本の単行本が出てしまったので、後から慌てて勉強しなくてはと思い、イラストの学校や絵本の学校に通いました。改めて勉強することもすごく楽しかったです。でも絵本の学校で作ったラフは仕事ではひとつも使えず、苦しい思いもしましたが、通って学んだことはすごく役に立ちました。
――絵本の学校に通おうと思った理由はなんでしたか?
私は、家にたくさん本がある家庭ではなく、絵本の作品にも詳しくありませんでした。ですから1冊目を出した後に、どうしたらよいかわからなくなってしまったんです。絵本について勉強すれば、突破口が開けるかなと思ったんですが、教わった方法が自分には合わなくて。
私は、自分が小さかったときに感じたことや経験をもとに、おはなしをふくらませるやり方で作品をつくり始めます。そこで「絵本を作ろう」と思うと、“自分”がすっぽりと抜け落ちてしまう感覚がありました。同じように「漫画を描こう」と思うとうまく進めなかったんですね。それなら「自分の描きたいものを、描きたいように描こう」と切り替えて描いたのが、コマ割り絵本の形でした。
――「絵本」や「漫画」といった決まった形にとらわれると、自由に描けないと感じたんですね。
はい。今は「自分の中から出てくる感情や感覚を大事にして、作品を作ろう」という姿勢で描いています。
――ながしまさんは、漫画と絵本以外にイラストも手がけています。いろんな方向で活躍なさっていますが、大変なことはありますか?
単純に、それぞれの仕事に割ける時間が3分の1になってしまうので、ひとつのジャンルに専念している方に比べると、制作ペースがゆっくりになりますし、頭の切り替えに時間がかかってしまうという悩みがあります。
――作品のもとが「自分の中にある」とお話していただきましたが、『まんがで哲学 哲学のメガネで世界を見ると』(監修:河野哲也、文・構成:菅原嘉子、絵・漫画:ながしまひろみ、ポプラ社)のように、イラストを描くときに、気をつけていることはありますか?
気が強そうな子を描くときに、気が強そうな見た目にならないように描くとか……。ステレオタイプに当てはめて、一面的に切り取られないような人物として描くようにしています。「哲学」がテーマだったこともありますが、目に見える部分だけではなく、目に見えない部分も表現できたらいいなと思って描いていますね。
――「自分らしさ」をどんな風に表現したいと考えていますか?
先ほど、形にとらわれると自由に描けないと言ったことと重なりますが、私の場合は意気込むとダメになってしまうので(笑)、ゆるゆると自分の頭の中で考えていることを、少しずつ形にして出していくという感覚的な作り方をしています。だから生まれてくるもの全部に、なにかしらの「自分」が入っているのかもしれないです。
――ネガティブな意見を言われたときは、どんな風に対処していますか?
読んでいて「引っかかり」を感じたということなので、確かにそうだと一度受け止め、そこからは「引っかかり」を解決する方法を考えようと、新しいアイデアを考えます。
私の場合、そもそものネタのもとが「自分の中」にあるので、周囲の人に相談したことがないかもしれません。解決策も自分と対話して、見つけていくという感じです。
――「自分」の考えを大切にしつつ、「他人」からの見え方や考え方も大切にして作品をつくっていくというスタンスなんですね。例えば、編集の方から指摘された「引っかかり」を解決するときに、手助けになることやものがありますか?
普段から映画や本を読んで、こんな描き方がある、こういう展開がおもしろいなどと取り入れるようにしています。あと、なにか心に刺激を受けて感情が動くと、思いつくことがありますね。
例えば友だちと話している中で、自分が「うっ」と引っかかったりうれしかったりしたことが、もとになることもあります。『まっくらぼん』(岩崎書店)は、小さいころに真っ暗なところでだんだん目が慣れてきて、暗闇の中でもいろんなものが見えてくるのが不思議だなと思ったことが、もとになっています。
『ぞうくんはいちねんせい』(アリス館)も、入学式にドキドキした思い出をもとにしています。ですから、自分の心の中に残っているものや感じたものを、誰かに演技してもらうというスタイルで、おはなしを作っているのかもしれません。
出版社からの内容紹介
ぞうくんは、今日初めて学校に行きます。隣の席の子は、人間の女の子の、コトコちゃん。緊張して挨拶で失敗し、ペンギンの先生にも「おかあさん」と言ってしまったり…でも、休み時間は元気に遊んだり。悲喜交々の楽しい1日です。
――ありがとうございました。
次回は『からっぽのにくまん』や『かっぱまきください!!』の作者の絵本作家・まつながもえさんに、お話を伺います!
文・構成: ナカムラミナコ