2011.03.18
第2回 「1見開き描き直しと、表紙のラフを描く、の巻」
「第32回講談社絵本新人賞」を受賞した、くせさなえさんの作品「ぼくとおおはしくん」。
絵本として刊行するまでには、さまざまなプロセスをへなければなりません。
さあ、絵本作家デビューまで、long & winding roadのスタートです!
2011年9月某日(火)
ワタクシ、担当編集(チ)は、くせさんの受賞作「ぼくと おおはしくん」の原画を持って、祖父江慎さんの事務所を訪問。祖父江さんは斬新なブックデザインで知られるグラフィックデザイナー。くせさんとは、京都の絵本塾、インターナショナルアカデミーで"師弟関係"だった縁で装幀をお願いした次第。
全般的に「丁寧によく描けている」という評価をいただき、当のくせさんに代わって大喜び。も、つかのま「ここのページは、もう一度チャレンジしてもらいたいね」。
それは、この作品のクライマックスシーン。「ぼく」と「おおはしくん」が、いっしょに飼っていた、かめの「かめた」が行方不明になり、ふたたび姿をあらわしたところです。ゆうゆうと泳ぐかめたが、見開きいっぱいに描かれています。
「手足がちょっと不自然でしょ、亀の手ってね」と、登場したのが、なんとホンモノの亀!
祖父江さんの事務所には亀がいるんです。
さっそく写メで、くせさんに送ります。
いちばんの感動シーンだから、会心のできばえで本にしようよ、という祖父江さんの親?心。
「ところで、この絵、クサガメですよね?」
「??? 本人に確認しますっ!」
クサガメでした。亀に詳しい祖父江さんでした。
9月某日(月)
くせさんより、「かめた」の見開きの修整ラフが。
写メのほか、水族館に行ったり、図鑑を調べたり、いろいろ研究したとのこと。なるほど、躍動的な泳ぎになっています。「背景の川の水は苦労した」ので、できれば亀だけ描き直して差し替えたい、と言うくせさんに、「川の底に亀の影が映ったり、水面に光が当たってキラキラしたり、水の透明感がわかるようにしましょうよ、頑張って全部描き直しましょうよ」と祖父江さん。「やってみます」。
あとからくせさんに聞くと、「印象派のようにね」というアドバイスがあったそう。1週間後、仕上がりを画像で送ってくれました。すばらしい絵になりました。頑張ってよかった、よかった。
このほかにも、描き直さないまでも、小さな直しがいろいろありました。
壁の落書きが後半のページで減ってしまっていたり(マズイ!)、「おおはしくん」が運んでいるダンボールに、実在するURLが入っていたり(もっとマズイ!)・・・。また、草の中の小動物や植物もいっぱい描き足しました。「カラスの頭が、ちょっとカラスらしくない。もっとゼッペキ」(祖父江さん)→直しました。
10月某日
「講談社絵本新人賞」の応募は、本文の15見開きのみ。本として出版するためには、表紙を描かねばなりません。ラフにとりかかります。「かめた」の見開きを、うまく仕上げることができ、勢いがついたかと思いましたが、表紙は、まさに作品の顔、くせさんは、かなり緊張してしまったようでした。
登場人物は、たったふたり、「ぼく」と「おおはしくん」。そして「かめた」。お話の内容がわかるようにしなきゃ、という思いに、どんどん追い詰められていきます。
ラフを何枚も描き直し、それでも確信がつかめないくせさん。毎晩、メールと電話でのやりとりが続きます・・・。
さあ、次回はいよいよ「表紙の完成と入稿の巻」。どんな表紙になったでしょうか。乞うご期待!