2011.03.23
第3回 「ようやく会心の表紙完成! いよいよ入稿、の巻」
講談社絵本新人賞受賞作の『ぼくと おおはしくん』絵本刊行に向けて頑張る、くせさなえさん。本文の絵の直しを終え、表紙の作成にかかったところで、ピンチに陥ってしまいました。ラフを何枚も描きましたが、どうしても「これだ!」という確信がつかめません・・・。
これが、描きたかった表紙!
そんなくせさんに、またも、祖父江さんのアドバイスが。
お話の中に出てくるシーン、でも描かれていない絵があるでしょう。それを描いてみたら。くせさんらしく、自然に、描きたい絵を描いて。主人公のふたりは、無理に大きくしなくてもいい、どういう風景のなかにふたりはいるの? まわりの草木や人や家はどんな感じなの? ふたり以外の人が歩いていたり、小動物がいたりするでしょ、そういうもの細かく描くの得意じゃないですか――。
どうも、そんなお話があったような……。それで、一気に描けたのが、このラフです。
やったー! くせさんらしい、いい絵になりそう。これで締め切りに間に合います。
ついに表紙も完成! すべての原画をいただきました
2010年11月某日
ワタクシ(チ)は、原画をいただくべく京都へ。くせさんも学んだ絵本の学校、京都・インターナショナル・スクールで、この日祖父江さんの授業があるため、滋賀県在住のくせさん、東京の祖父江さん、私の3人がいちどに会えるめったにないチャンス! スクールの一室をお借りして、原画をすべて見せてもらいます。
「表紙はきのう描き上げたんですう」というくせさんに、「すごくいいねえ、頑張りましたね」と祖父江さん。「かめたが泳ぐ見開きも、すごくよくなった」。
夜、授業のある祖父江さんを残し、くせさんと私はお寿司屋さんで原画完成を祝いました。おりから紅葉の季節、京都市内は大賑わい。嬉しい夜でした。くせさんと別れ、私は原画を抱えて、ドキドキしながら最終の新幹線で東京へ。
祖父江さん、デザイン開始!
翌週、原画を祖父江さんの事務所にお持ちし、印刷所にテスト入稿。作品は全体に、緑の木や草の面積が大きいのが特徴。さまざまな調子、濃淡の緑色を印刷で再現してもらうため、まず、どんな製版、インクが適しているかを試すのです。祖父江さんから、印刷所の担当者に細かいリクエストが伝えられます。
数日後、テスト校が出てくると、2タイプのインクを見比べて一方を選び、製版の方針を決定。そしていよいよデザインに入ります。
本文の文字は、読みやすさを考え、絵のテイストとも合う「TB ちび丸ゴシック」にやや手を加えた書体に。そして、くせさんが苦労して描き上げた表紙が、どんなふうになるのかが、とても楽しみです!
2010年12月某日
祖父江さんの事務所にて。本文、表紙の色校が出たので、印刷所担当者にも来ていただき打ち合わせ。やはり、緑色の部分が、原画の繊細な色の違いが印刷で出にくいため、改善をお願い。表紙はまだデザインが未完成のため、その後祖父江さんと話し合います。
(祖)「カバーソデ(カバーの折り返し部分)寂しくないですか? 何か入れましょうよ」
(チ)「入れましょう、いれましょう」
(祖)「おおはしくんが、かめたに名前書いてるところ、中のページにないですよね」
(チ)「ないです」
(祖)「反対側のソデにも、なにか入れちゃう?」
(チ)「帰ってきたかめた、とかですかね?」
(祖)「そうね、そうね」
(チ)「背にイラスト入れることもあります」
(祖)「いいね、いいね、ぼくとおおはしくん、絵でいれましょうか」
と、いうわけで、あっというまに、くせさんは新たに4点のイラストを描くことになったのでした、しかも大至急・・・。
※なお、この会話の内容については、24日から始まる「講談社絵本新人賞 ぼくと おおはしくん 応援レビュー大募集」で、絵本を読んでいただくと符合します。
くせさん、だいぶこなれてきました。ささっと描いてきたラフに、祖父江さんが添削。1日で仕上げます。これらの絵がカバーのいろいろな場所に入ります。
すべてのデザインが完成しました!
2010年12月某日
こーんなに最後の最後までがんばって、いよいよ今日、表紙のデザインが完成です。
祖父江さんも、最後の最後まで、タイトルの書体を吟味してくださいました。
オビも、とても凝っています。本屋さんに並ぶ日が楽しみです。
実は年内最終日のこの日、すべての入稿が完了しました。
年明けに印刷所と数往復のやりとりを重ね、出来(しゅったい=刊行)に向かいます。
次回第4回は、祖父江慎さん、特別出演です。お楽しみに!