ニューベリー賞受賞作家の新作絵本。真夏のかんかん照りの日の午後。遠くに雨雲をみつけた少女テッシー。友だちと水着になって、待っていると…。自然の恵みを喜ぶ子どもと母親の表情が素直に描かれた美しい絵本。
作者はメリーランド州バルティモアの出身だそうで、気になってネットで調べてみたら、アメリカでは有名な児童文学(ヤング・アダルト分野の作品含む)作家だそうです。
特徴としては、歴史的背景を物語の構成に使われることが多いようです。
この絵本のイラストはジョン・J・スミスさんで、オイハオ州出身のイラストレーター。現在はニューヨークに住んでいらっしゃるようです。
なぜ、私が作者やイラストレーターの出身地まで細かく書くかといえば、この絵本の舞台がどう見てもアメリカの中西部もしくはメキシコに近い南の方の地域の下町を思わせたからでした。
この舞台設定や登場人物たちの細かい打ち合わせは、両者でされたのでしょうか?私は多分、お二人でじっくり練られたんじゃないかと思います。
肌のことを描いてしまうと差別用語にあたってしまうかもしれませんが、この絵本の中に登場する主人公のテッシーは完全な黒人、テッシーと仲の良い近所のお友達はそれぞれ、テッシーよりは肌の色が薄いけど、やっぱり黒人系のジャッキー=ジョイス、リズはスパニッシュ系にしか見えないし、ローズマリーは白人系の女の子として描かれていました。
雨を待ち望むどこかの下町には、きっとこんな少年少女たちがいっぱいいるのでしょうか?
そして、テッシー達のように楽しく差別も区別もなく、たとえ雨が降らなくて苦しい生活をしていても、楽しく暮らしているのでしょうか?
この絵本で、何より気に入ったところはテッシー達が雨の中で走り回って遊んでいるうちに、少女たちのお母さんも飛び出してきて、一緒に踊るシーン!!
多国籍人種の問題もさりげなく取り上げているこの作品は、とても心に残る素敵な絵本でした。
出来るなら、ただ「雨を待っている作品」としか理解できない年頃のお子さんより、小学校高学年以上中学生、高校生の子どもたちに読んでほしい、読んであげたい作品です。 (てんぐざるさん 40代・ママ 女の子15歳、女の子11歳)
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