この可愛いめがねのくろねこ「ふうたくん」のおはなしシリーズの作者は、『ピンク、ぺっこん』や『ようこそ森へ』、また「ピーマン村」シリーズの絵でもお馴染み、自然派アーティスト村上康成さんです。1985年に刊行されたものが一部改訂され、復刊されたそうです。 全4巻のうち、第1弾となる本作のテーマは「さかなつり」。
ふうたくんが大好きなさかなつりを楽しんでいると、そこにひょっこり現れたのはいたちくん。 いたちくんはふうたくんが釣りあげたさかなをじっと見ています。 ほしいのかな。 でも、せっかく釣ったさかな。ふうたくんはこう言うよね。
「あげない。ぜったい あげない」
・・・。
「しょうがないなあ」
結局いたちくんにさかなを分けてあげるふうたくん。 そうしたらね。 次の日、いたちくんがやってきてね・・・。
ゆっくりと進むふうたくんの時間の中で起きる、いたちくんとのささやかな心の交流。 ちょっとしたことだけど、表情を見ているだけでふうたくんの心の動きが見えてきます。 お互いを思いやる心を少し持ってみるだけで、なんだか心が気持ちいいなあ。 そんなシンプルだけど大切なことが、読んでいるだけで子どもにも伝わってくる内容になっています。
村上さんのファンなら思わずニンマリしてしまうくらい、村上さんご自身にそっくりなふうたくん。のんびりした雰囲気。そして、ふうたくんといたちくんが並ぶその後ろ姿の愛らしさ! すっかり「ふうたくん」の世界に夢中です。今から続きが待ち遠しくなってしまいます。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
絵本作家をはじめイラストレーション、エッセイ、翻訳家としても活躍するマルチ自然派アーティスト 村上康成が小さなお子様に贈る「ほのぼの絵本」全4巻!くろねこ「ふうた」と動物たちのふれあいを描いた、やさしい絵本です。自然とともに生きることの大切さ、「立ち止まることで、見えるものもあるんだよ」と教えてくれる名作絵本。ゆったりした言葉のリズムと温かな色彩の絵で、「頑張らない、急がない、ありのままの君でいい」とお子様に語りかける、心なごむシリーズです。第1弾となる本作『ふうたさかなつり』は、さかなつりにでかけた「ふうた」と、つれた魚がほしい「いたちくん」のささやかな交流を通して、お互いを思いやる心を育む内容です。
気づくかな? フウタくんのビクに?
そうなんです。ふうたくん一日目は腰にビク(釣った魚を入れるかご)を下げてます。でも、次の日は腰にビクがありません。
何故でしょうね。
このことに気づくと、絵本の中で風太くんが言っている
「しょうがないな」
の意味が違ってくるのです。
ビクに気づかなければ、
そんなにさかな欲しいなら、「しょうがないな」、さかなあげるよ、と読めますが
もしもあなたが「ビク」に気づいたとすると、何故次の日にビクを持ってこなかったのかの理由を考えたくなりますよね。
二日目にビクを持ってこなかったということは、ふうたくんは釣った魚を持って帰る気がなかったということになりますよね。
何故そんな気になったのかと言うと、一日目にイタチくんと魚でコミュニケーションが取れて嬉しかったからだと思うのです。
だから、もしも魚がつれたら、またさかなは誰かにあげちゃおうと考えたので、次の日はビクを持ってこなかったのではないでしょうか?
すると次の日には、なんとイタチくんがお礼に来てくれたではないですか。
この流れから考えると、先の「しょうがないな」は、友だちになろうと思ったのにイタチくんは帰っちゃうのか「しょうがないな」、さかなあげるよ、と読めるわけです。
また、「あげない」は相手の気を引く言葉だったということになりますよね。
つまり、一日目で、魚は釣って食べるものから、友だちになるきっかけ に変わったというわけです。 これはアドラー心理学でいう、人間の喜びの全ては人間関係、ということも通じていますよね。
実はこのシリーズこのトーンで統一されているのです。
いやー、深い本ですね。
復刊ドットコム さん良い本を復刊してくださり、本当にありがとうございます。 (笠尾さん 50代・せんせい )
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