「きみはどこにいるの? どこにきえたの? どの星なの? みつけたい さがしたい きみのところに いきたい」
大切な人が目の前から突然いなくなって、その人を探し求めてやまない心を、もみの木の姿に託して描いた切なくも美しい絵本です。
ひまわりを育てていた9歳の男の子は、花が咲いた一週間ののち、飛行機事故でこの世を去ります。 「お母さんがやいたマドレーヌ、だいすき」 「お母さんのにおい、だいすき」 そう言って両手を広げて飛んできた男の子。 名前はけんちゃん。
同級生のみきちゃんも、けんちゃんのけしゴムをたいせつに持っていてくれている。 けんちゃんが過ごした、消えない日々。 けれども突然の事故でいなくなったけんちゃんを探して……お母さんとお父さんは山に登ります。 その山の名は、御巣鷹山。
そう、1985年8月12日の日航ジャンボ墜落事故で山に消えた520のいのちのひとつだったのです。 焼けただれた山に、けんちゃんのお父さんが植えた小さなもみの木は、長い年月で空にとどくような高さになっていきます。 涙を受け止め、枝をゆらす大きな木に……。
いせひでこさんのすばらしい水彩画は、儚くも美しいこの世の色を描き尽くすかのよう。 美谷島邦子さんがせつせつと綴る言葉は、悲しみをたたえつつも、いせさんの絵に寄りそわれ、いのちを受け止める真摯なまなざしに満ちています。
けんちゃんに会いに、もみの木に会いに、御巣鷹山に登り続ける美谷島さん。 美谷島さんはけんちゃんのお母さんです。 そして美谷島さんと親交が深く、自らも御巣鷹山慰霊登山を続けてきたいせひでこさん。 おふたりだからこそ作ることができた、大切ないのちの灯りへ、祈りをこめた絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
あの日 たくさんの星が山に降った。
1985年8月12日、群馬県御巣鷹山に日航ジャンボ機が墜落、520人が亡くなる史上最大の航空機事故となった。 事故で9歳の息子を亡くし、心が迷子になってしまったお母さんは、焼けただれた山の斜面にもみの木を植え、くる年もくる年も、息子に会いに山に登り続けた。 もみの木は、悲しみを聞き、悲しみに寄りそい、35年で空にとどくような高さになった…。 空の安全を願い、ひたむきにいのちと向き合いつづけた母の軌跡を、いせひでこが精魂込めて描く。
この事故は私も覚えています。
小学校低学年だった私は、家族でこの事故をテレビのニュースで見ていました。
群馬県出身ではありませんが、比較的近い地域だったので、親もこの大惨事のニュースを凝視していた風景が、今も走馬灯のように蘇ります。
今親になり、子供を失った方もいたのだと思うと、本当に改めて心が痛みます。
今年はコロナの影響で登山を諦めた方もいるでしょう。
どうか想いは届きますように。
届いていますね、きっと。
そしてもう二度とこのような事故が起こりませんように。 (まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子10歳)
|