ぐももももももーん ずむむむもももーん 夜なき石が、ないてらや──
決して、持ち上げることのできない、夜なき石。 その石の下にはおそろしいものがひそみ、そのせいで、あたりには草もはえず、獣もいないのだと、言い伝えられている。
そんな夜なき石に挑もうとする男がひとり、名は「ぐん太」。
「ああ もちあげてえなあ あの石を 千年 万年 一億年も うごかねえ あの石をよ」
夜なき石を持ち上げるため、武者修行の旅に出た、ぐん太。 旅先で、天を支える巨人や、山をも引っ張る男とも戦い、打ち負かしたぐん太だったが、それでも石は動かない。
「なあ ぐん太よ あの石は 力だけじゃあ もちあがらねえ 泣いたことのねえやつにゃ もちあがらねえ ときには負けたりもしてよ ほろほろ涙も ながしてよ そのくやしさや どうにもならねえ 心の心を かかえてよ 人を好きになる力で もちあげるんじゃ 人を許す力で もちあげるんじゃ」
不気味とも、神秘的とも感じるオノマトペ── 周囲の暗闇からもなお黒々と浮きあがる、夜なき石──
呪術的な妖しい雰囲気と、腹の底にひびくような生命の躍動に満ち満ちた、新時代の創世神話!
著者は「陰陽師」シリーズや「サイコダイバー」シリーズをはじめ、その他数多くの作品で文芸界を牽引する、作家の夢枕獏さん。 そしてイラストには、「ねぎぼうずのあさたろう」シリーズや『みずくみに』、『おならうた』などで知られる、絵本作家の飯野和好さん。 夢枕獏さんが2011年に筆を取り、生み出した「ぐん太」を、 飯野和好さんの、原初的なパワーにあふれた勢いのある筆致が、 あらたな神話世界に魂を吹き込みます!
泣いたことのない人間には持ち上げられないという石。 それに挑む力を得たぐん太は、いったいどうして泣いたのか。 そして、耐えがたい涙を流してなお、石に挑む心を抱き続けた、ぐん太。
「ああ、おらもなりてえなあ。ぐん太のようによ!」
この物語の結びの言葉のとおり、「ぐん太のように強く生きられたら!」そう願わずにはいられない、力強い物語です。
ぐん太は、夜なき石を持ち上げることはできるのか。 夜なき石の下にある、おそろしいものとはなにか。 生涯をかけて石に向き合ったひとりの男は、やがて創世の神になる──
読めば腹から力があふれる! ドでかいスケールの生命力ほとばしる一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
力が湧いてくる、不思議な物語
夜なき石。それはかつて誰も持ち上げることができない石だった。 少年ぐん太はその石を持ち上げることに挑み、誰よりも修行し誰よりも強くなる。 しかし、それでも石は持ち上げられなかった。 石を持ち上げるのに必要なのは、負けを知り、悔しさを覚え、人を許し、好きになる心で持ち上げるのだとわかったその時、ぐん太は初めての体感を得る!
<著者・夢枕獏 あとがきより> 「ぐん太」は、私の心の中で、この30年間ずっと育ててきた物語です。 世界再生の神話のような物語をと意識して書きあげました。 それに飯野さんが凄い絵を描いてくださいました。 どうかこの物語が新しい神話となりますように。
【編集担当からのおすすめ情報】 力強さと美しさに打たれ、腹の底から、ぐぐぐっと力が湧いてきます。 読むひと、読むとき、読むところによって、この絵本から感じるものは変わってくるかもしれません。
大人の方にも、ぜひお手にとっていただきたい絵本です。
息子が保育園児だった頃のこと。
「お母さんは女でよかった?」
「よかったよ。○○も女が良かった?」
「男でよかったよ。でもこんな男じゃ嫌だ」
「こんな男って?」
「……弱い」
当時、友達にキックやパンチをされて
されるがままでやり返せなかった息子に
力が強いのだけが強さじゃないんだよと話したけれど、
あの時この本があったなら
読んで聞かせてあげられたなら
どんなに勇気づけてあげられたでしょう。
人はたくさんの別れや
悔しい思い、思い通りにいかないはがゆさ、
悲しさや淋しさを経験しながら
人を好きになり、人を許すことを覚えて
初めて強くなれる。
その本当の強さがぐん太に石を持ち上げさせたのだと思います。
こぼれてどうしようもなかった涙と
「おおおおりゃあああ
どおおおりゃあああ
ど どうだああああ」
万感の想いがこもったかけ声が
ぐん太の強さの証です。 (白井音子さん 60代・その他の方 )
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