かなえは引越しで知らない街にやってきました。 荷物の整理を手伝い、疲れて座っていると、玄関の方で「とん ことり」とちいさな音がします。 引っ越してきたばかりで郵便がくるはずがありません。 かなえが見に行ってみると、郵便受けの下にすみれの花束が。 次の日は音とともにたんぽぽが3本、その次の日は音とともに手紙が。 そして次にあの音が聞こえたとき、かなえは「まって、まって!まってよう!」と叫んで玄関のドアを開けます。
新しくやってきた子も、受け入れる側の子も、なんともいえないモジモジした気持ちになる季節。 そんな繊細な子どもの心の動きを実に見事に描写しています。 少しの優しさ、少しの勇気で新しい関係が生まれる。 大人の心も温かくしてくれる絵本です。
(金柿秀幸 絵本ナビ事務局長)
新しいお友だちとの出会いを描いた絵本
山の見える町に引っ越してきたばかりのかなえ。お父さん、お母さんと荷物の整理をしていると、「とんことり」。玄関の方で小さな小さな音がしました。かなえが玄関に行ってみると、そこにはすみれの花束が落ちています。次の日は、たんぽぽが3本、その次の日は、手紙が郵便受けに入っています。だれからでしょう? ふしぎな「郵便物」をめぐって、新しいお友だちとの出会いを描いた絵本です。
【安藤パパ】 新しい町で、家族の新しい生活が始まる「春」を描いた清清しい一冊。 僕に転勤経験はないのでピンと来ないが、知らない町に赴くことは子どもにとって、さぞ淋しく心細いものなんだろう。たしか『千と千尋の神隠し』の冒頭シーンもそんな風だった。 本書ではそんな少女の「寄るべなさ」だけでなく、大人の「済まなさ」や「気遣い」をもキメ細かく描写。特に町の風景には、それらすべてを優しく受け入れる「温かみ」がある。「こんな町なら住んでみたいなあ」と読み手に感じさせ、さぞかし転勤族の 不安な気持ちを和らげてくれるのだろう。 ちなみに、うちの娘はかなえにスミレやタンポポをくれた女の子が大好き。 あの子の名前は何で、彼女も転勤組だったのかどうかが、この本を読んだあと、必ず僕と娘で議論になるテーマだ。
林明子さんの絵は、本当に好きで
なかでも子どもの 表情の描写が本当にリアルで
自分が子どもだった時の気持ちにすっと入っていけるので、感動します
不安、ためらい、躊躇、拗ねてる時......
顔だけでなく、ポーズとか、もう体全体から
「こどもの匂い」が立ち上りそうな。
この本でも、ずっと暗い表情で部屋の中だっただけに
最後の1ページ、
その春の明るい光、空気感とともに、
はじける笑顔が、なんとも印象的です。 (ミドリムシ917さん 40代・ママ 女の子17歳、女の子13歳、男の子6歳)
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