目の覚めるような原色に、花や動物、サークル模様がデザインされていて、持つだけで心が華やいでくる――人気のバッグ・ブランド「リッチーエブリデイ」を立ち上げた仲本千津さんは、いま注目の「社会起業家」です。
千津さんは、子どものころから「人の命を救う仕事をしたい」と思っていました。最初は医師になりたいという夢をもっていましたが、それをあきらめることになり、つぎに国連職員を目ざします。大学に入り、今度は研究者への道を進みましたが、銀行員として社会人生活をスタートすることになりました。それでも、自分の夢をかなえる仕事を探しつづけた千津さんは、転職先の仕事でアフリカ・ウガンダのシングルマザーたちに出会います。「彼女たちの力になれるビジネスはないだろうか」。そして千津さんは、アフリカンプリントを使ったバッグをつくる会社を立ち上げました――。
バッグづくりを通して、アフリカの貧困問題を解決し、女性を勇気づけ、輝かせたい――迷い、遠回りしながら、自分の信じる道を歩んできた仲本千津さんの姿を描く “進路決定”ドキュメンタリー。
2024年の課題図書「中学校の部」に選ばれた一冊。
『アフリカで、バッグの会社はじめました』という長いタイトルに
「“寄り道多め“仲本千津の進んできた道」と、これまた長い副題がつきます。
書いたのは、雑誌の記事などを書くライターの江口絵理さん。
女性二人の名前があってややこしいが、
社会起業家である仲本千津さんが歩んできた道を江口絵理さんが丁寧な取材で
まとめたドキュメンタリー作品。
しかも、本には「“進路決定”ドキュメンタリー」なる言葉も並んでいたりします。
そんな本が中学生を対象にした課題図書に選ばれるということは、
現代の中学生はもうその頃から自分の将来の進路を考えはじめるのでしょうか。
でも、この本の主人公ともいえる仲本千津さんは、
最初からアフリカでバッグを作ろうと決めていたわけではありません。
どころか、そこにいたるまでは何度でもなりたいものを変えています。
最初は医学部、それは諦め、次は国連で働こうと、でも、まだぼんやり。
大学卒業して就職したのは銀行、それでも海外の憧れが強く、
アフリカ支援NGOに籍を移します。
そこで出会ったのが、アフリカのウガンダの国。
そして、会社経営なんかしたこともないのに、ウガンダでバッグを作って売り出すことに。
これが日本で大ヒットになったというわけ。
なので、この本は決して”進路決定“を求めるものでもなくて、
むしろ迷っていいんだよと肩をたたいてくれる作品になっています。
ただ、仲本千津さんの素晴らしいところは、常に前を向いていたこと。
そんな勇気をくれる、一冊です。
(夏の雨さん 60代・パパ )
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