
人はいったいどこからくるのでしょう。 そのはじまりの場所を、静かに、あたたかく、そしてユーモラスに描いた物語。
きりがたちこめてあたりは真っ白、右も左も分からないところに立ったコグニ。 ここがどこかわからないけれど、ちっともこわくありません。みょうに心地良いのです。その心地良さについ身をゆだねてしまいそうになりながらも、「とにかく しっかり しなくっちゃ」と、自分の意志で歩き出します。途中、時間がのびたりちぢんだりするように感じたり、なにか大切なものがないような気がしたり。それでも今できることは歩くことだけ、とコグニは歩き続けます。
そんなコグニが出会うのは、石を積んで川の水をためているちょっと変わったオトコノコと、性格の違う二ひきのヘビ。オトコノコとのやりとりや、ヘビの会話は物語の楽しい場面です。
本書は、作者のいとうひろしさんが幼い娘さんに「おかあさんのおなかの中で何をしていたの?」とたずねたところ「ヘビさんと遊んでた」と教えてもらったことから生まれた物語なのだそう。
コグニが世界がはじまる前の場所から、こちらの世界にやってくるまでの道のりは不思議で神秘的であり、コグニのこれからを感じる場面では、嬉しさと祝福のような気持ちがわき上がりました。さらに、コグニとふしぎなオトコノコの関係にも嬉しさがこみあげます。
最後に、お話と合わせて本のデザインにも注目を。お話が進むにつれ、挿絵がどんどん濃くなり、コグニの輪郭がはっきりしていくところや、本のカバーがつるつるとした包装紙のようになっているところは、ぜひ実物を手にとって確かめてほしいポイントです。 本自体がギフトのようにも感じられる祝福に満ちた一冊。子どもたちと一緒に読んだら、どんな反応がかえってくるのでしょうね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)

コグニは迷子でした。霧が立ちこめていて、あたりは真っ白。右も左もわからない。でも不思議、ちっとも怖くなくて妙に心地よいのです。霧が温められた牛乳みたい……。歩き続けているうちに川のそばに着きました。そこで、石を積んで川の水をためているちょっと変わった男の子に出会います。その男の子の正体は…? 生命誕生の神秘を、ユーモラスに、哲学的に描いた幼年童話。

雲をつかむような話が展開していきます。
ぼんやりしたコグニの姿と、意味のよくわからない内容が、最後になってわかりました。
産まれてきた赤ちゃんの胎内の体験だったのですね。
いとうひろしさんの、子どもが語った物語がベースになっているということですが、改めて読み直すと、その神秘性と生命の誕生の厳かさが伝わってきました。
自分たちもみな、コグニ体験をしてきたのでしょうか。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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