秋に実をつける“くるみ”。一粒のくるみをもとに、祖父、子、孫、さらにその先へと広がる命のすばらしさを伝える絵本です。
ある朝エミリアが目を覚ますと、ベッドの横には青い木の実がひとつありました。それは、くるみの実。エミリアへのプレゼントです。おじいちゃんは、この木の実の由来をエミリアに語って聞かせます。
おじいちゃんは、エミリアと同じくらいの年に海を越えてこの国にやってきました。小さいカバンとくるみの木の実を一つ持って。くるみは小さな鉢に植えられ、引っ越しをするたびにおじいちゃんと共に移動してきました。くるみが苗木になったころ、おじいちゃんはおばあちゃんと出会い、今の家にやってきて、立派なくるみの木になるよう庭の土の中に植えられたのです。
今や、おじいちゃんのくるみの木は、見上げるほど大きく、枝を伸ばし茂っています。横にはエミリアのママが植えた中くらいのくるみの木も。そしてエミリアも、くるみの木を育てる日が来たのです。
エミリアは植木鉢に青い木の実を埋めました。鉢の中で、くるみは芽を出し育っていきます。しかし、それと反比例するように、おじいちゃんの腰はまがり一日のほとんどをアームチェアですごすようになりました。ゆっくり育っていく苗木を見ながらエミリアはおじいちゃんに尋ねます。 「いつか きに なる?」 「なるとも」とおじいちゃん。 「すばらしいことが おきるには、じかんがかかる。たとえ、じぶんが みられなくても かならず おきるんだよ」
おじいちゃんが遠い海の向こうの国から大切に持ってきたくるみの実。それは今、ごつごつした枝を広げ、天高くそびえる大きな木になりました。その横にはママとエミリアの木も。これらの木は、これからもずっと一緒にここで育っていくことでしょう。すばらしいことは、長い時間をかけて起こります。おじいちゃんもママもエミリアも、それらを見ることができなくても、おじいちゃんから始まった物語と、すばらしい命のつながりは、これからも続いていくのです。
いつか自分がいなくなったとしても、その一部は受け継がれている、そうした巡る生命の尊さを、ぜひ感じ取ってください。
(徳永真紀 絵本編集者)
くるみが育ち、めぐる季節と命。おじいちゃんが教えてくれた大切なこと。
ある朝目をさますと、ベッドのわきのテーブルにくるみがひとつ。おじいちゃんがくるみにまつわる物語を聞かせてくれます。小さいカバンとポケットにくるみ。おじいちゃんはそれだけを持ち、海を渡ってきたのです。
「ちいさな わかぎを にわの、ゆたかな ちゃいろい つちにうえかえた」 「このおうち? このおにわ?」 「みに いくかい?」
おじいちゃんはくるみの育て方を少しづつ教えてくれます。けれど、くるみが育っていくにつれて、おじいちゃんはだんだんとゆっくりになっていって――。
「すばらしい ことが おきるには、じかんが かかる。たとえ、じぶんが みられなくても かならず おきるんだよ」
図書館の新着コーナーで見つけました。
移民として海を渡ったおじいちゃんが持ってきた1個のくるみ。それを大事に育てると、その隣にお母さんがくるみを植える。そして今度は娘のエミリアが、その隣にくるみを植えるのです。
大きさの違う3本のくるみの木が並ぶ姿は、命がつながっていくことを感じさせてくれ、感動します。
「すばらしいことがおきるにはじかんがかかる」というセリフが胸に響きました。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子19歳、女の子16歳、男の子14歳)
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