冬のある日。まちのはずれにある、みんなに忘れられた誰も住んでいない家に、一人の旅人がやってきて、その扉をあけます。真っ暗な部屋の天井は今にもくずれ落ちそうで、屋根にも壁にも大きな穴がたくさんあいていました。
「いえというのは すこしは きれいでないと」
旅人は家じゅうをなおしながら、この家で暮らすことに決めます。春になり、新しい旅人たちがやってくると、彼らもまた畑を耕し、レンガをつくり、はたらきながら暮らすことになりました。夏に新しい旅人たちがくると、部屋の中に窓をつくり、家の裏に井戸を掘り、秋にやってきた旅人たちとは、おふろをつくり、小麦粉をひき。10人の旅人たちが暮らす家は、少しずつ明るく快適になっていきます。
食卓にはみんなの座る椅子が並べられ、やぶけたズボンをなおし、畑でとれた野菜や小麦粉で料理をすると、さあ「みんなのいえ」のパーティです!
たしろちさとさんの絵本デビュー作として2001年に発表されたこの作品。新たに描き下ろされた絵も加わり、二十数年の時を経て、単行本として発売となりました。そこに暮らす一人一人が工夫を凝らし、まわりの自然を生活に取り入れ、遊び心やアイデアがつみかさなっていき、毎日少しずつ変化していく「みんなのいえ」。こんな風に暮らしながら家が出来上がっていくなんて、理想的! まさに世界にひとつだけの家。
また次の年になったら。新しい家族が増えたら。あるいは、もし自分がこの家に住むとしたら。このお話には終わりがありません。「みんなのいえ」の想像はふくらんでいくばかりですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
みんなに忘れられ荒れ果てた家に、旅人たちがやってきて、一緒に暮らしはじめます。木を切って屋根をなおし、畑をたがやし、井戸をほり、壁をなおし、椅子を作り…、世界でひとつの「みんなのいえ」を作りあげます。
この家に最初に来た人は、吹雪を避けるためでした。
はじめは必要にせまられて、家を修繕していたのかもしれません。
もし私だったら、大したことは出来ませんが、縫い物と簡単な料理だったら出来るかなあ。
誰も住んでいない忘れられた家が描かれている表紙裏の見返しと、後見返しの豊かな農場まで揃った素晴らしい風景の対比に惹かれます。
すてきなシェアハウスだと思いました。 (みいのさん 60代・その他の方 )
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