ぼくは難民になった。ぼくの名前なんて、なくなってしまったみたいだ。 ――ワシントン州子どもが選ぶ絵本賞2011ノミネートほか ――「難民絵本100冊ワークショップ」から生まれた翻訳絵本
スーダンの内戦で難民になったサンゴールは、母と妹とともにアメリカへ。でも、アメリカでは、自分の大切なルーツである名前をだれも正しく呼んでくれない。ある朝、サンゴールは自分の名前を伝える、素晴らしいアイディアを思いついて――
*******あらすじ詳細******* スーダンの内戦で「なんみん(難民)」になった少年サンゴール。 帰る家も帰る国もなくなり、母と妹とともにアメリカへの受け入れが決まる。「どこへ行ってもお前はサンゴ−ルだ。どこへ行ってもお前はディンカ族だ」と長老に励まされて旅立つ。
アメリカの大都会に戸惑いながら、覚え立ての英語で母を支えるサンゴール。でも、出迎えの人も学校の先生も皆、「サン・・サン・・サンゴエル?」と、きちんと名前を呼んでくれず、同級生にも「サン、サング!」とからかわれる。
「ぼくの名前なんて無くなってしまったみたいだ。難民キャンプへ帰りたい」と思い悩むサンゴール。ある朝、自分の名前を絵で描いて伝えると、同級生たちも次々と自分たちの名前を絵に描き、はじめて皆と打ち解ける。「素晴らしいアイディアね。それに、素晴らしい名前だわ」と先生に褒められたサンゴールは、自分のルーツと自分の名前に胸を張る。
スーダンという国で起きている内戦、ディンカ族という少数民族の事を知らなければ、サンゴールのこだわりは充分に理解できないのかも知れません。
でも、私はこの絵本から、スーダンに思いを馳せることが出来ました。
サンゴールは、難民の家族でした。
同じ名前の父親は、戦争で死んでしまいました。
サンゴールは何代も受け継がれてきた名前だったのです。
それだからこそ、誰に何を言われようとサンゴールはサンゴールなのです。
たまたまアメリカに迎えられて、サンゴールと母妹と「空飛ぶ船」に乗ります。
全てが未知の世界だから、飛行機でアメリカに渡るシーンに書かれた1行だけの文は重要です。
「動く階段」、「魔法で開くドア」、都会の日常が全て驚きでした。
それでもサンゴールはサンゴールのままの男の子でした。
自分の名前を覚えてもらうためのアイデアはグッドジョブでした。
工夫すれば伝わる道をサンゴールは見つけたのです。
しかも自分の名前を着て歩けます。
この絵本は、サンゴールのディンカ族としての誇りの物語です。
でも、同時にスーダンに残してきた難民のこと、スーダンで起こっていることを忘れないための物語でもあります。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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