
この世界のあちこちで、あまりにもひどいことばかりが起きている。誰がなぜこんなことをするの? 何をしたというの?
家を失い、家族を失い、がれきの中で茫然と立ちすくみ、泣き叫ぶ。私にできることがあるだろうか。
けれど遠い国の子も、隣にいる子も、私と同じ「この ほしの こどもたち」。同じ空を見あげ、眠れない夜を過ごしている。そうだよ、小さな手を取りあって暗闇をこえていこう。ぼくらが友だちになって、楽しい世界を想像し、歩きだそう。新しい朝のために、好きな場所へ行くために、幸せに生きられる世界をめざして……。
数々の心に残る絵本作品を生み出されてきた吉田尚令さんが、初めて作絵を両方手がけられたのがこの絵本。今現在続く悲惨な戦争の状況を憂い、「せめて絵本のなかだけでも子どもたちを楽しい世界へつれていきたい」という強い願いが込められた絵と言葉は、読む人の心を強く揺さぶります。
限られた場所で生き、明日を夢見ることもできない。それは決してその子たちの決められた運命ではないのです。みんなと同じようにおしゃべりをし、想像を楽しみ、好きな時間を穏やかな表情で過ごす絵本の中の子どもたちを見ながら、私たちが平和を目指すことをあきらめてはいけないのだと、改めて心に誓うのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

この星のあちこちで、こどもたちが苦しい状況のなかで助けをもとめている。いったいなにを、どうすれば、平和な日々をつかめるのだろう? たとえ国がちがっても、みんな地球のこどもたち。手をとりあって歩きだそう。大地を、海を、自由にかけめぐり、幸せに生きられる世界をめざして…。世界中のこどもたちが、なにごともないおだやかな毎日をすごせるように、絵本作家の吉田尚令が願いをこめて描いた絵本。

先日開催したEXPO 2025 大阪・関西万博は
世界中から158の国と地域の人たちが参加しているそうです。
万博にしろオリンピックにしろ、世界がひとつになる一大イベントですから
多くの国が参加することは喜ばしいですが、
今回の万博でいえばロシアが不参加ですし、ギリシャも参加できなかったようです。
国連での議事にしろ世界がひとつになるというのは理想ではありますが、
決して容易なことではありません。
まして、今でも戦火の下で暮らす人たちもたくさんいます。
国の都合、大人たちのかけひきで犠牲になる子供たちもたくさんいます。
万博は華やかなイベントですが、
それをきっかけにしてそういった視点で世界を見直すのもいいように思います。
吉田尚令(ひさのり)さんの『このほしのこども』も
そういう強いメッセージ性をもった絵本です。
冒頭、色調の暗い絵にこんな文がつけられます。
「このせかいのあちこちで/あまりにひどいことばかり/(中略)/このひとたちがどうして?」
戦火の中を逃げる一家。小さなぬいぐるみを抱いて泣く女の子。
平和なこの国とそういう戦火や荒れた国の子供たちとは、
何一つ変わらない「おなじそらのした」でつながっている「このほしのこどもたち」。
そして、吉田さんはこう呼びかけます。
「たのしいせかいをそうぞうしよう」と。
それは、ごくあたりまえに普通の生活。
みんなが一緒にして、安心して眠りにつける、そんな生活。
一人ひとりが、そんな世界を想像することで、
このほしは随分とよくなるのではないだろうか。 (夏の雨さん 70代以上・パパ )
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