新米騎士に叙任されることがほぼ決まっていた、16歳の見習い騎士ティウリ。 しかし最後の条件となる、礼拝堂で一夜をすごす義務の途中で、年老いた男に助けを求められる。切羽詰まったその声にこたえて礼拝堂を抜け出したティウリは、森で謎の騎士が殺され死にかけているところに出くわす。騎士に託された「王への手紙」を携え、たった一人、行ったこともない遠い隣国の王のもとへの旅がはじまった…。
オランダの作家トンケ・ドラフトによる、手に汗握る冒険小説。少年ティウリが、そのときどきで迷いながらも、自ら信じたことをやりとげようと困難に立ち向かう姿に、何とも言えない緊張感とドキドキする面白さが伝わってきます。 前半、ティウリが敵の赤い騎士だけではなく、謎の灰色の騎士の一団にも追いかけられ、追いつめられる場面は、緊張の最高潮です。塔に閉じ込められた絶望的な一夜、自分の身に何が起こっているのかわからない不安のなかで、ティウリが為した精一杯の抵抗。そこに手をさしのべるひとの存在があり、少年は一夜を乗り越え、新たな道を切り開きます。だんだん謎の騎士の正体がわかり、下巻へと物語はつながっていきます。
『王への手紙』初版が出版されたのは1962年。翌年にオランダで子どもの本の賞(「金の石筆賞」の前身)を受賞。それ以来この本がオランダの書店の児童書コーナーに見られなかったことはないそうです。 1930年、当時オランダの植民地だったインドネシアのジャカルタで生まれたトンケ・ドラフトは、第二次世界大戦最中の1942年に占領した日本軍によって、母親と妹たちとともに日本軍収容所で過ごすことになります。苦しい日々の中で、作者は想像のお話を作ることの楽しみを知り、その才能の喜びを知ったのだそうです。
トンケ・ドラフトは『王への手紙』の挿絵も自ら描きました。その絵は岩波少年文庫版でも見ることができます。お話を作り、語り、挿絵を描く。トンケ・ドラフトが生み出した物語の一体感が、生き生きした会話やさりげない挿絵からそのまま伝わってきます。 隣国の実情をくわしく知らないままに、旅への一歩を踏み出し、次第に身をもって世界を知っていく、16歳のティウリの姿に勇気づけられる作品です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
騎士になるための最後の試練の夜に、思いがけず重大な使命を与えられた少年ティウリは、隣国へと旅立つ。謎めいた隠者、陰険なスパイ……手に汗にぎる、オランダの人気冒険小説。
読み始めから、物語に飲み込まれたように読みました。
灰色の騎士に追い詰められるところなどハラハラが止まらなかったです。主人公と一緒に同じ気持ちで読み進めました。
図書館で借りて読みましたが早く下巻が読みたくてたまりません! (ゆうこんぴさん 30代・ママ 男の子4歳)
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