「まあ、きれい!」 るるこは、お母さんからとても大きいももいろの紙をもらいました。紙を広げると部屋いっぱいになり、上に立つと、部屋じゅうがやわらかなももいろのひかりでいっぱいになりました。
るるこは、この大きなももいろの紙で、世界一首が長くて、世界一強くて、世界一足が速く、世界一きれいなきりんを作ることにします。のりとハサミとクレヨンで、紙の上にまたがりながら全身を使って、どんどん作ります。名前は「キリカ」と名づけました。最後に二つの大きな目と大きな口を書くと、キリカがしゃべりはじめました。 ところが立ち上がろうとするとどうしても立てません。世界一長い首が重くてあがらないのです。そこでるるこはある知恵を働かせ、キリカはるるこを乗せて走り回れるほど元気になりました。けれども次の日、今度は雨のせいでキリカの首がずぶぬれになってしまいます。るるこはまたキリカを元気にできるのでしょうか。さらに、キリカの首のももいろを塗り直すため、二人は「クレヨン山」に向かうのですが‥‥‥。
のりとハサミとクレヨンを使って作った動物が動き出す。なんてワクワクする出来事なのでしょう。折り紙や工作や塗り絵など子どもたちの身近なものからはじまっているところにも、子どもたちが夢中になる秘密がありそうですよね。 大きなキリカの背中に乗って走る場面、「クレヨン山」で出会う不思議な色の動物たちとのやりとり、いじわるな熊との対決‥‥‥と、さまざまな冒険の場面から一貫して伝わってくるのは、るるこがキリカをとても好きで、世界一のきりんだと信じる気持ち。そのまっすぐな気持ちがキリカを強く美しい存在にしているようにも感じます。でもそんなるるこも賢くてたくましくて、とっても素敵な女の子なんですよ。
1965年の出版以来、50年以上も愛されている幼年童話の名作。『ぐりとぐら』『いやいやえん』『そらいろのたね』など多くの絵本と童話を作られた作家、中川李枝子さんによるお話は、読む子どもたちの興味をたちまちのうちにとらえ、中川李枝子さんの夫で画家の中川宗弥さんが手がけられた挿絵は、構図やデザイン、色彩にわたり、今見ても全く色あせない素敵さがあります。元気なるるこちゃんの様子や、部屋いっぱいの紙で作られたキリカが勢いよく動き出す様子、一方で雨に濡れてしおれる様子までもが生き生きと描かれていきます。子どもの頃に読んで、この中川宗弥さんの絵の好きな場面がずっと心に残っているという方も多いことでしょう。
対象年齢は、4歳ぐらいから小学2年生ぐらいまでの子どもたちに特におすすめです。ひらがなが多く、漢字にも全てふりがながついているので、小学1年生や2年生ならひとりで読める子もいるでしょう。ただ、88ページの長さがあるので、よりお話の世界に集中できるように、はじめはできるだけ読んであげることをおすすめします。ぜひ親子でお話も絵も楽しんでほしい名作です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
世界一きれいで大きい桃色のキリン・キリカ
るるこは、お母さんから部屋いっぱいになるぐらい大きな桃色の紙をもらいました。るるこは大喜び。さっそく、のりとハサミとクレヨンで大きなキリンを作りはじめました。できあがった桃色のキリンに、るるこは、「キリカ」と名前をつけました。ところが、雨がふってきてキリカの首は、濡れてきれいな桃色がはげてしまいます。キリカの首を再び桃色にぬりなおすため、るるこはキリカに乗って「クレヨン山」にむかいます。
絵本だけでなく、児童書の長いお話も興味を持ち始めた5歳の次女と一緒に読んでいます。毎夜、20ページずつくらい、区切りのよいところまで少しずつ読むことにしました。娘は、もうちょっと先までと言うのですが、ワクワク楽しいお話を長く味わいたいと思ったので、あえてゆっくり読んでいます。
娘は、お話の続きがききたくて、夜寝る前にこの絵本を読む時間を楽しみにしてくれるようになりました。わたしも嬉しいです。
紙で作ったももいろのきりん「キリカ」と、るるこちゃんのやり取りが、かわいくてかわいくて。終始ももいろで描かれた、やさしいイラストも素敵です。娘はキリカが干されている洗濯バサミの数を数えたしながら、本当に楽しそうにお話をきいています。
児童書を読みはじめの5、6歳の子に読んであげるのに、ピッタリの本だと思います。小学生なら一人で読めます。2年生の長女は、一気に読み終えて、「あー面白かった!」と言っていました。 (クッチーナママさん 30代・ママ 女の子8歳、女の子5歳、男の子3歳)
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