ある日突然、これまでできなかったことができるようになる――子どもの成長って、めざましくて、びっくりするほどまぶしく見えることがあります。
あさえが幼稚園から帰ると、妹のあやちゃんがぐったりしていました。お母さんが病院につれていくと、なんと盲腸だということがわかり、そのまま入院することになってしまうのです。 普段は、おねえちゃんのお気に入りの人形をとってしまったり、いたずらっこな妹ですが、いないとさみしい。今日はおうちががらんとして見えます。明日、お見舞いにいくことになったあさえは、あやちゃんは何を持っていったら喜ぶかなと一生懸命考えるのでした――。
病院から戻って、あわただしく妹の着替えなどを準備して出て行くお母さんの姿、お父さんが帰ってくるまで雷雨の中ひとりぼっちで待つ、寂しさと心細さ。あやちゃんは大丈夫だろうかという不安。お父さんとふたりっきりの夜ご飯……ささやかな日常のシーンの積み重ねから、にぎやかな声がたえないいつものおうちの温もりとは違う、落ち着かないざらざらした空気が感じられます。 そんな中、お姉ちゃんが妹を心配する優しい気持ちと、いじらしさがまっすぐ読者に伝わってきます。
次の日、あさえちゃんが妹のために病院に持って行ってあげたものとは……? それを知った瞬間、あさえちゃんをぎゅっと抱きしめてあげたくなります。にっこりはにかんだように笑うあさえちゃん、しっかりしたおねえちゃんの表情ですよね。 心の動きを丁寧にすくいとった物語と、やわらかく表情豊かな絵で、子どもがぐぐっと成長する瞬間が見事に描かれています。こういう瞬間を重ねて、子どもは大きくなっていくんだな、とじんわりと感動がしみこんできます。読んだら、きっと忘れられない大切な1冊になるはずです。
(光森優子 編集者・ライター)
突然、妹が盲腸の手術で入院することになりました。ひとり残されたあさえの気持と、妹へのほのぼのとした愛情をみごとに描いた物語です。林明子の表情豊かな絵が心に残る傑作です。
初めて読んだのは私が幼稚園のときです。
これまで読んだ絵本の中で一番印象的で、絵本と聞けばこの本が思い浮かびます。
私自身は男兄弟しかいませんし、幸いなことに兄弟が入院した経験もありません。にもかかわらず、大好きな絵本です。
このお話のどこが好きだったかというと・・・
ずばり、入院している場面です。なかでも点滴しているあやちゃんに憧れていました。手に残った点滴の跡が魅力的でした。
この場面に影響されて、点滴している女の子の絵ばかり描いていたことを覚えています。
少々変わった子供だったかもしれませんが、6歳前後の私の記憶です。
姉妹で色違いのワンピースを着ているところや、ほっぺこちゃんにも夕食が用意されているところ、プレゼントの包み紙の柄がかわいいことなど、隅々までよく見てました。
もちろん内容も子供心に響きました。あさえに影響されて、病気でもない弟に、当時一番大事にしていたぬいぐるみをあげました(後になって返してもらいましたが)。
兄弟ってけんかもするけれど、やさしくしてあげたい、喜ばせてあげたいとも思っているものですよね(うまく表現できないだけで)。
それを教えてくれた絵本だったと思います。
大人になってから読み返したら・・・
お姉ちゃんの気持ちが痛いほど伝わってきて、こんなふうに子供の気持ちを包み込めるお母さんになれるだろうかと思って、涙が出ました。
娘に読んであげられる日が楽しみです。 (ミナミーナママさん 30代・ママ 5ヶ月)
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