この作者のものを読み始めたのは「クーヨン」のエッセイですが、その後も惹かれるものを感じて読んだのが、この作品です。
その後も何度か読み返しているのですが、特徴として、言葉が突き刺さるように心の中に入ってきます。
村中さんは、大学教授で児童文学作品の創作もあります。
作者が、小児病棟の子どもたちに絵本を読みあったことの記録です。「読み聞かせ」「読み語り」といろいろな言葉がありますが「読みあう」という言葉の選び方も、子どもとの関係や言葉の選び方を意識していることが感じられます。
私が最初に読んだ時、最も衝撃を受けたのは「しろいうさぎとくろいうさぎ」を読んだ後でパニックを起こした少女の話でした。「しろいうさぎとくろいうさぎ」は、名作と言われる作品です。読み手側のメッセージ、受け手側の状態、そして関係性というものが、こんなにも本を読むことに関係するのかという衝撃でした。
小児病棟ということで、常に死と隣り合わせに生きている子どもたち、そんな子どもたちを特別視せずに関りたいという願いを持ちながらも、病気ということで生命の危機に直面している子どもには優先順位をつけていかなくてはならない厳しさなど、この本から伝わってきます。
何度か紹介したいと思いつつ、紹介するのが難しくて断念してしまった本なのですが、紹介してみました。
私が、心に残った箇所はもう一つ、あとがきで、作者が自分の恩師に言われた「村中さん、あなたにしかできないことでなく、あなただからできることをさがしてごらん。きっとなにかあるよ。」という言葉。
「しか」という言葉は限定で強い語感がありますが「だから」には肩の力が抜けた自由な雰囲気が感じられました。
自分が何かする時にも「自分だから」ということをこの本を読んでから意識するようになりました。