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生きていくなかで信心は欠かせない
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投稿日:2018/07/22 |
『遠野物語』といえば民俗学者柳田国男の代表作で、それを京極夏彦さんが現代風そして子どもたちにも読みやすいように文章を綴った絵本のシリーズの、一冊である。
このシリーズは第1期として『かっぱ』や『ざしきわらし』、『やまびと』『まよいが』の4冊を刊行し、第2期もこの『おしらさま』を含む4冊の刊行が行われている。
このシリーズは文を京極夏彦さん一人が担当しているが、絵は作品ごとに違うのも特長のひとつといえる。
この作品の絵は伊野孝行さん。イラストレーターという風に巻末の略歴で紹介されている。
この作品が「おしらさま」という遠野あたりの家々で祀られている神の話が書かれたもので、しかもその「おしらさま」の男神のお姿が馬の頭をしているなど、何やら不気味な感じを、伊野さんは見事に描いている。
「おしらさま」が何故馬の頭をしているかという訳も、馬と結婚した娘の父親が怒って馬の首を切って捨てたとも言われているそうだが、やがてそれは養蚕のはじまりの謂れにもつながっていくから、怨恨の伝説でもなさそうだ。
どころか、「おしらさま」は眼の神とか女の病を癒す神でもあったそうだから、遠野の人たちは大事に祀っていたにちがいない。
もちろんそれでも、信心が浅い家もあって、そんな家に限って不幸があるというのも、古来からよく言われている通りだ。
そんな怖さもちょっぴりあったりする絵本なのだ、これは。
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石井桃子さんがいてくれたから
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投稿日:2018/07/20 |
私たちの人生とは所詮一度限り、「一期一会」。
けれど、別の人の人生をたどることはできる。
それは、本を読む愉しみのひとつでもある。
だから、子供の頃には「伝記」が読まれ、大人になってからも「私の履歴書」であったり「評伝」を読んだりする。
その人にはなれないけれど、本を読むことでその人が歩んだ道を追体験できる。
本は一度きりの人生を幾重にも茂らせてくれる。
この本はあかね書房という出版社が刊行している「伝記を読もう」というシリーズの一冊。
石井桃子さんはいうまでもなく『くまのプーさん』やブルーナの『ちいさなうさこちゃん』を日本に初めて紹介した翻訳者だし、『ノンちゃん雲に乗る』や『幼ものがたり』を書いた創作者だし、こども図書館のさきがけ「かつら文庫」の実践者。
もしかしたら、子供たちはそれが石井桃子とどれだけ関係のある作品かを知らずに本を手にしているかもしれない。
けれど、石井桃子さんはそのことをけっして悔しがることはないだろう。
石井桃子さんがよく記した言葉、「あなたをささえるのは、子ども時代のあなたです」には、石井桃子さんが主でなく、主はあくまでも子どもたちそのものという意味が込められている。
そのことこそに、石井桃子さんの魅力があると思う。
児童向きの伝記ではあるが、石井桃子さんの101歳という長い人生を実にうまくまとめている。
この作品で石井桃子さんをもっと知りたいと思った人は、尾崎真理子さんの『ひみつの王国 評伝石井桃子』をぜひ読むといいだろう。
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助詞はむずかしい
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投稿日:2018/07/15 |
文章を書く時、助詞には気をつけなさいと教えられる。
この絵本のタイトルでいえば、「海が」の「が」は使い方としてはおかしいのではないか。
正しく書けば、「海に」ではないか。
しかし、この絵本の主人公の男の子、ティモシイ・ロビンズ君、の気分でいえば、やはり「海がやってきた」なんだろう。
そして、それは多くの男の子が夢見る未踏の地へのあこがれのようなものだったのではないだろうか。
何しろ、最後に「波うちぎわの、かたくしめった白い砂に」自分の名前を書くなんて、ちょっとした冒険家のようだもの。
その日の朝早く、男の子はまだ空に灰色の霧がかかっている頃、海に向かって歩きだすところから始まる。
彼のあたまには「船長きどりのふるい帽子」までのっかっている。
朝早いので、砂浜には誰もいない。
男の子が一番のり。
だから、そこでみる生き物たちも彼が最初に見つけたものたちばかり。
海辺で拾った貝殻を耳にあてると、海の歌が聞こえたりする。
しだいに海の潮がふくれてきて、海辺にはたくさんの人が集まってくる。
そんな人たちのそばで、男の子は砂の城をつくったりする。
この子は騎士だ。
けれども、海はもっともっとあふれて、大きな波をうちよせる。
ロジャー・デュポアザンの単調な線の、けれど生き生きとしたラインの、それは青の単色でも色鮮やかな多色でも素敵な絵が、男の子の、まるで冒険家のような気持ちを上手に表現している。
だから、この絵本はやっぱり「海がやってきた」で正しいのだ。
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一家総出で、楽しいお仕事
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投稿日:2018/07/08 |
この絵本の著者平野レミさんといえば、いつも元気ハイテンションで人気の料理家です。
ご主人は人気イラストレーターの和田誠さん。二人は出会って、わずか10日ぐらいで結婚を決めたという伝説? が残っています。
レミさんのお父さんは平野威馬雄さん。著名なフランス文学者。なので、血筋はとってもいいんです。
レミさんと和田誠さんには二人の息子さんがいて、長男が唱さん、次男が率さん。
そう、この絵本の絵を描いているのが、この二人の息子さん。
この絵本の初版が1992年ですから、まだ二人とも小さかった。
それが今では、二人とも結婚して、唱さんの奥さんは女優の上野樹里さん。
つまり、レミさんを中心に(あるいは和田誠さんを中心に?)この一家はすごい。
この絵本はタイトルに「平野レミの」とあるとおり、料理大好きのレミさんが「ひ(火です)もほうちょう(包丁です)もつかわない」で料理をする方法を伝授しています。
絵を担当したのは二人の息子さんですが、けっしてうまいといえません。
うまくないけど、味わいはあります。
さすが和田誠さんの血を受け継いでいます。
それに火も包丁も使わない料理ですから、たまごかけごはんやバターごはん、ナッツごはんといったように、料理そのものも素朴なものですから、二人の絵によく合っています。
和田誠さんは出てこないと思っていたら、最後の裏表紙の見返りに、「デザイン 和田誠」ってあって、なんだ、この絵本は和田誠さん一家総出で作った、楽しい本なんだとうれしくなりました。
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水丸さん、かわいく絵本を描きました
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投稿日:2018/07/01 |
安西水丸さんの本名は渡辺昇。確か村上春樹さんの小説でも使われていたはず。
渡辺昇くんが安西水丸に変身するのは、渡辺くんが働いていた「平凡社」という会社の同僚の命名による。
それが嵐山光三郎さん。
つまり安西水丸さんと嵐山光三郎さんは会社の同僚として出会い、その後水丸さんが亡くなるまで、いえ、亡くなってからあとも終生変わらない友情を育んできた。
この絵本の文を担当している「あらしやまこうざぶろう」さんはもちろん嵐山光三郎さんだし、絵を担当している「あんざいみずまる」さんは言うまでもなく安西水丸さんだ。
二人の手による絵本の創作は結構早い。
1976年に出した『ピッキーとポッキー』が最初で、この「はいくえほん」がシリーズ3作めとなる。
出版されたのが2013年で、その頃水丸さんはイラストレーターとしての経歴も長くなり、最初の頃のような線がなかなか描けなかったそうだ。つまり、ヘタに描くことに悩むなんて贅沢極まりない。
おそらくこの絵本に使われている俳句は嵐山光三郎さんの作なのだろうが、水丸さんはその俳句を楽しみながら、ヘタに描こうと悩み、やっぱり嵐山の俳句はヘタだななんてにやけながら、ヘタに描こうと腕を奮っていたにちがいない。
ちなみに、どんな俳句が書かれているかというと、「おぞうにを たべてすぐねて うしになる」「ゆきだるま ゆきをかぶって ふとったよ」など。
もちろん嵐山さんはヘタに詠むのは難しいというにちがいないだろうが。
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なんだか、ガッツだね! と歌いたくなる絵本
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投稿日:2018/06/24 |
絵本というのは本当に世界が広い。
よしながこうたくさんのこの絵本を見つけた時は、思わず「なんじゃこりゃ」とつぶやいて、それで手にとってしまうという、惹きつけの魔力にかかったような気分です。
なんともいえないシュールな絵の魔力(あるいは魅力)。
きっと子どもたちが夢中になってしまうにちがいない、そんな力を感じました。
物語はというと、ある日1年2組の教室に金髪のサムスン君が転校してきます。
サムスン君、少し照れながらも「オハヨ、ゴザマース」と日本語であいさつをすると、たちまちクラスの人気者に。
そんなサムスン君に嫉妬するのが、せいじ君。どうしてかって? だって、せいじ君の大好きなまどかちゃんまでサムスン君に夢中なんですもの。
でも、どうしてサムスン君は人気者になったのだろう。
せいじ君たち、やんちゃな仲間はうんうん考えて、たどりついた答えがサムスン君のあいさつ。
あいつみたいにしっかりあいさつしようぜ。
よし、今日からせいじ君は「あいさつ団長」だ!!
でも、本当にこれで解決するのかな。
とにかくよしながこうたくさんの絵がとんでもないから、出て来る子どもたちも先生も、キャラが立ちまくっています。
こんなクラスに転校したら、サムスン君でなくても、生き残るのが大変でしょうね。
それでいて、ひとたび仲良くなれば、結束が固い、そんなクラスのような気がします。
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おしゃれな家族を描いたおしゃれな絵本
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投稿日:2018/06/17 |
おしゃれ。漢字で書くと、お洒落。
あの服おしゃれね、とか、あそこのレストランお洒落だって、なんて使う。
ラーメン屋さんであまりおしゃれって使わない。
意味を調べると、「洗練されている」と出てくる。ラーメン屋さんだって洗練されているお店はあるだろうが、やはりどちらかといえば、もっと脂っこい。
フランスの絵本作家セルジュ・ブロックさんが描いたこの絵本は、おしゃれだ。
絵の感じが日本のものとはやはりどこか違う。
その差が、おしゃれという言葉になりそうだ。
サムという男の子の家も、なんとなくおしゃれ。
絵を描く仕事をしている、ちょっとおなかがでて、頭も少しうすくなっているパパも、ショートな髪型で細身のママも、わがままな、それはきっとサムより年下だから仕方がないんだけど、弟のレオンも、みんなおしゃれだ。
どうしてそう見えるのだろうって考えて、それはセルジュさんの絵の彩色がとってもおしゃれなことに、洗練されていることに、気がついた。
サムはパパが大好きだから、だって「大きくなったらパパになる」っていうくらい好きなので、パパの癖とか行動パターンとかみんな覚えている。
だから、この絵本はサムが大好きなパパがいっぱい描かれている。
でも、それはフランスの、サムのパパだけのお話ではない。
きっと日本の、君たちのそばのお父さんも、きっとサムのパパのように、おしゃれなはずだ。よく見ると。
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ただ、こどもたちのために
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投稿日:2018/06/10 |
絵本作家かこさとし(加古里子)さんは亡くなる直前の今年(2018年)3月から4月にかけておよそ一ヶ月間、NHKの取材を受けていました。
その姿が「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で、先日放映されました。
タイトルが「ただ、こどもたちのために かこさとし 最後の記録」。
まさに「こどもたちのために」終生、絵本を描き続けた人かこさんの姿がカメラにおさめられた貴重な記録映像でした。
番組の最後に使われたのが、1995年に刊行されたかこさんの科学絵本シリーズの一冊であるこの本でした。(この絵本の執筆では加古里子という漢字表記を使っています)
この絵本はかこさんの人気シリーズである「だるまちゃん」や「からすのパンやさん」とは一味も二味も違います。
どちらかといえば、デビュー作である『だむのおじさんたち』(1959年)に近いものです。
タイトル『人間』とあるとおり、宇宙の誕生から地球の成り立ち、その小さな星に生き物が生まれ、やがて私たち「人間」が誕生する、壮大な世界観がまず描かれます。
その次には子供がどのように誕生して成長するのか、ここでは性教育のような描かれ方をしています。
この単元でかこさんはかつて子どもが自分が母親のどこから生まれたかわからないという疑問に答える形で、ていねいに綴られています。
こういうあたりが、「こどもたちのために」描いたかこさんらしい一面です。
そして、人間の身体の成り立ち、人間の歴史とつながっていきます。
かこさんはこの絵本を制作するにあたって10年以上の歳月を有しました。
それだけ強い思いが結実した絵本だといえます。
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この二人、ごっつう仲よまっせ
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投稿日:2018/06/03 |
大阪は藤井寺市生まれの絵本作家長谷川義史さんが慣れ親しんだ大阪弁を駆使し、海外絵本の翻訳に新鮮な風を送ったジョン・クラッセンの『ちがうねん』や『みつけてん』。
そのクラッセンが絵を描いて、マック・バーネットが文を書いたのが、もちろん翻訳は長谷川義史さんで、この絵本です。
タイトルのとおり、主人公は「サンカクさん」。
名前のとおり、体型だけでなく、家も家の出入り口も三角で、性格もどちらかといえば三角。丸い性格でないのは、間違いない。
何故なら遠く離れたシカクさんのところまで、わざわざ「わるさ しにいく」ほどだから。
三角の景色をすぎ、なんだかややこしいところも越え、しだいに景色は四角になっていきます。
シカクさんの家に着いたサンカクさんは、ヘビがきらいなシカクさんに「シャーッ!」とヘビのマネして驚かせて喜んでいます。
やっぱりサンカクさんの性格は、丸くありません。
それでもシカクさんには「おこらんといてえな」なんてシラッと言うのですから、ちょっと友達にはしたくありません。
そこでシカクさんはその仕返しに、わざわざ遠くのサンカクさんのお家まででかけることになります。
この二人、仲がわるいのか。本当はとっても仲がよかったりして。
ジョン・クラッセンの絵がとってもいい。
この絵を見ているだけで、心がほっと丸くなります。
そして、何より長谷川義史さんの大阪弁がごっつうはまってます。
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いのちをじっとみつめる
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投稿日:2018/05/27 |
この絵本につけられた出版社の小さなメッセージカードに、作者の中川ひろたかさんがこんな言葉を綴っている。
「この地球は、様々ないのちを生んだ、いのちの星だ。ぼくたち人間はじめすべての生き物たちは、そのいのちをいただいて生きている。(後略)」と。
そして、この作品が「食育」の絵本だとしている。
ある日おかあさんとスーパーに買い物に行った「ぼく」はお母さんに頼まれた野菜や魚、お肉といった買い物をしながら、それらが海や陸に関係した食材であることを学んでいく。
そういえば黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』でも、黒柳さんが学んだ「トモエ学園」ではお弁当に「海のものと山のもの」をいれることを薦められたとあったが、あれは戦前の随分昔の話だが、考えてみると「食育」の実践であったことがわかる。
この絵本ではお母さんはその日の晩ごはんの「寄せ鍋」を使って子どもに食べ物の大切さを教えている。
最近流行りの市民農園にしても小さな子供のいる若い家族が借り手として多い。
それは野菜作りを通じて「食育」を教えようとする、親の思いだ。
おかあさんはぼくに言う。
「いのちをいただくことで、ひとはいきているのね」と。
その一方で、ぼくの大好きなスナック菓子はあまり食べない方がいいとも話す。
このあたりは、絵本を読むのにきちんと説明が必要だろう。
あいかわらず加藤休ミさんのクレヨン画はとってもおいしそうだ。
野菜やお肉が「いのちのたべもの」だから、よけいにおいしく見えるのだろう。
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