
東に太平洋、西に阿武隈の山々をのぞみ、 海から山まで続く緑ゆたかな町がありました。 ここ双葉町には約7千人が暮らしていました。
しかし、2011年3月の原発事故によって、 すべての人びとが「ふるさと」を追われ、 町役場のあたりも草におおわれていきました。 10年近くたっても、だれも住んでいません。
でも、ここには人びとの日々の暮らしがあり、 「明るい未来」を夢みた時代もありました。 その夢をみさせてくれたのは、原発でした。 しかし、その原発は、未来や夢だけでなく、 暮らしも奪ってしまいました。
町にある原発から飛び散った放射性物質は、 今も、これからも強い放射線を出し続けます。 ずっと、ずっと、何代にもわたって。
それでも、この町に生まれ育った人にとって、 ここは、かけがえのない「ふるさと」。 暮らしを紡ぎ、未来を築こうとしていた人びと。 今は、遠くの避難先に住んでいても、 心のなかに「ふるさと」は残っています。
たとえ、もう住めなくても、残したい、伝えたい。 心のなかの「ふるさと」を、 ここに暮らしがあったことを、 子どもたちに。

原子力爆弾には反対しつつ、原子力発電は社会を「明るい未来」に導く希望だと思わされてきた自分たちが、大きな勘違いをしていたことに気づかされたのは、くしくも大自然の起こした大災害からでした。
あの日から10年経った今、「復興」という言葉で封印されつつある現実をこの本で突きつけられました。
人はどうして都合の悪いことを忘れようとするのでしょう。
あれから10年、確かに復興はあり、社会は元気になってきたように見えるけれど、良いところだけを見ようとすることが、決して良いことではないと、この本で反省させられました。
こんな本も、子どもたちに語り繋げていかなければいけないと思います。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
|