第40回 日産 童話と絵本のグランプリ童話大賞受賞作品。
遊びにきた遠くの公園で、自転車のかぎをなくしたことに気がついたぼく。今日にかぎって一緒に遊んでたウッチーは先に帰ってしまったし、今日にかぎってケータイを充電したまま家にわすれてきた。仕方がないから、自転車を運んで帰ることにしたけれど、そこに現れたのは、苦手なクラスメイトの松田くん。一緒に自転車を運んでくれると言って、歩き出した。松田くんの案内で着いた先は、またまた苦手な山本くんの家! すると……。
今日にかぎって起こる、ちょっとした出来事が重なって、いつもとちょっとちがう今日になる。読後感さわやかな作品です。
日ごろ自転車で行動することが多い私には、他人事に思えないお話です。
乗ろう思ったマイチャリのカギが見つからない時の緊張感は、駐車場で車を出そうとした時にキーが見当たらない緊張感に匹敵します。
ただ、自転車は押して帰れるのです。
ふだん知っているはずの道でも、近道しようとわき道に入ったら、自転車をこいでいる時に見える景色と、自転車の後輪を持ち上げて歩く時の景色は違います。
まして不慣れな場所であったら、角を曲がるたびに迷路に入りこんでいくような気がします。
この絵本の素晴らしさは、そんな私の実体験の上を行っていました。
友だちとの遭遇と、あまり親しくもなかったその友だちとの人間関係の構築と、発想の転換です。
渡辺くんは、友だちの友だちの山本くんの奇策で、楽に自転車を押すことができるようになりました。
動かない方の車輪をスケートボードに乗せて固定するというのです。
最初に会った松田くんも加えて、途中まで一緒に歩いてくれた友だちは、きっとこんなきっかけで関係を深めていくのですね。
渡辺くん、良かったね。
余談ですが、私の場合、見つからなかった自転車のカギがちゃんと出てきたりします。
焦らず心を落ち着けて、もう一度探してみることも重要です。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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