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- ためしよみ
こぎつねが留守番をしていると、ドアをノックしてやってきたのは「しずけさ」だった。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『しずかなおきゃくさま』。第16回コンポステーラ国際絵本賞、2024年度クアトロガトス財団賞を受賞したスペイン生まれの美しい絵本。どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
今日はお留守番。
「だれが きても、ドアを あけては だめよ」
かあさんぎつねにそう言われたけれど、こぎつねはひとりぼっち。からすの声とすずめのさえずりが外から聞こえてきます。そんな時、ドアをノックして「しずけさ」がやってきた。誰でもない、「しずけさ」ならいいかと、こぎつねはドアをあけて部屋に招きいれます。
「しずけさ」は、部屋いっぱいになるほど大きくて、二つの目があって、透明。最初は落ち着かない気持ちのこぎつねだったけれど、一緒におやつを食べ、音楽なしで踊り、楽しく過ごします。「しずけさ」がきてから、外で音がしなくなったみたい。床で丸くなりながら、こぎつねは思うのです。
「しずけさが きてくれて よかったな」
「しずけさ」は誰でもないけれど、キイチゴを食べればにっこりし、ダンスを踊ればとっても上手。そしてこぎつねに、とっておきのことを教えてくれるのです。
第16回コンポステーラ国際絵本賞、2024年度クアトロガトス財団賞を受賞したスペイン生まれの美しいこの絵本。「しずけさ」が示してくれているのは、自己を見つめることの大切さと、孤独と静寂を楽しむことの大切さ。
まるで音のしない時間や場所を見つける方が難しくなっている、今の世界。孤独と向き合い、それを受け入れ、楽しむことが必要なのは大人ばかりではないはずです。子どもたちだって、静かに耳をすまし、自分の心臓の音を聞き、じっと心の声を聞いてみる。そんな経験ができたなら、きっと自分と向き合う力がついていくのではないでしょうか。
いつか出会ったことがあったかもしれない
ひとりでいると、つい何か音を鳴らしてしまう。静かすぎる空間にいると、落ち着かない。気がつけば、自分は「しずけさ」の存在を忘れてしまっていたのかもしれない。いつか出会ったことがあったかもしれないのに……。自分の体の音に、心の声に、耳を澄ましてみれば何かが見つかるはず。この絵本を読んだ子どもたちも、いつかまた「しずけさ」のことを思い出す時がくるのかもしれません。
この書籍を作った人
1972年、スペインのクルナリャ・ダル・リョブレガ(バルセロナ)に生まれ、大学で情報学を学んだ。現在、カタルーニャ語の作家として活躍する一方、カタルーニャ語の幼児雑誌「アル・タタノ」の編集にあたる。2002年に『ジェロニさんとイワシ』(未訳)で、カタルーニャの古典的児童文学者の名を冠するメルセ・リモナ賞、2023年に『フレデリックのメリック』(未訳)でマヨルカ賞児童文学部門を受賞。
この書籍を作った人
スペインのバルセロナに生まれ、バルセロナ美術学校等で学んだ。親がイラストレーターであったため、鉛筆や絵の具、漫画や絵本に囲まれて育った。現在、教鞭をとりながら、絵本や児童雑誌を中心に画家として活躍。2020年に『雨それともお天気?』(未訳)で、カタルーニャの権威あるセラ・ドール批評家賞児童文学部門を受賞。
この書籍を作った人
1960年、大阪府生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。バルセロナ自治大学大学院修士課程修了。小説や児童文学の翻訳のほか、スペイン語の子どもの本専門ネット書店「ミランフ洋書店」を経営し、スペイン語の魅力を伝えている。訳書に『やだよ』(西村書店)、『日ざかり村に戦争がくる』(福音館書店)、『パパのところへ』(岩波書店)ほか多数。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。