「脳には8つの番地があり、それを意識すると人間の脳は伸びていく」と提唱し、35万部を超えるベストセラー「脳の強化書」シリーズ(あさ出版)の著作者でもある医学博士・加藤俊徳さん。加藤さんの最新作『夢をかなえる 10歳からの脳番地トレーニング』は、小学校中学年以上の子どもにもわかりやすく、脳のしくみや脳番地の育て方がわかる、トレーニングブックです。
脳を育てれば、「苦手」なことが「得意」なことに変わるという内容に興味津々の金柿秀幸(絵本ナビ代表)が、脳番地トレーニングついて、加藤さんに、インタビューしました!
自分の脳を育てることで、苦手を克服、将来の夢が実現する…。マンガと豊富なイラストでわかりやすく解説。 著者はMRI画像診断のスペシャリスト。脳の各部位で思考系・視覚系・聴覚系・感情系・理解系・記憶系・運動系・伝達系と,8つの働きがあり,それを『脳番地』と名付けました。『脳番地』の発達具合によって得意不得意があったり,個性が出たりします。脳が大きく発達する10歳という年齢の子どもたちに向け,マンガで分かりやすく解説。脳番地を鍛えるトレーニングなど,読み手に将来への夢を持たせる内容になっています。
●年齢に関係なく脳は成長中!? 脳を知ると能力は伸びる!
金柿:加藤先生は、脳番地トレーニングの本を何冊も書いていらっしゃいますが、『夢をかなえる 10歳からの脳番地トレーニング』は、はじめて子ども向けに出版された本ですね。子ども向けに脳番地の本を書かれたきっかけを伺えますか?
加藤:この本を書いたきっかけは、「小さい頃にもっと脳科学の知識があったら、天才になれたかも!」という、私自身の体験からくる思いです。
私は子どもの頃に活字が嫌いで、音読が苦手でした。小学校2年生のときの国語の成績は5段階評価で「2」。国語の時間は時計を眺めて、授業が終わるのをカウントダウンしているような子どもでした。「私は国語が苦手なんだ、嫌いなんだ」とそのときは考えていましたが、その後医師になって、脳科学の道に進んでから考え直すと、まったく違っていたことがわかりました。
もしその時に脳科学の知識があったら、今までうまくいかないことを悩んでいた時間を、すべて脳の成長に変えられたかもしれないと気付いたんですね。
金柿:得意・不得意の理由は、脳の成長の違いにあるという考え方に、びっくりしました。脳番地を意識すると、子どもの「不得意」が克服できるのでしょうか?
加藤:そうですね。例えば、「うちの子は落ち着きがない」と悩んでいるお母さん。でも、人間は運動系脳番地を使って情報を取得するんです。だから動き回る子は人より情報を取りに行くチャンスが多いんだと考えることができますね。
子ども自身も、脳番地を意識すると「苦手」が「得意」に、「得意」は「もっと得意」に成長していくんです。そんな脳の知識を、生活に活かして欲しいというのがこの本の趣旨です。例えば、「右脳の前側の方(イメージで考える力)を伸ばしたい」と意識すると、脳はそのように成長していくものなんですよ。
金柿:「右脳の前側の方を伸ばしたい」と思うだけで、そうなるんですか?
加藤:そうなんです。多くの人は、実際に頭の中を覗いたわけでもないのに、「成績が良い子は頭が良く、成績が悪い子は頭が悪い」と誤解をしています。そのため、成績が悪い子が「ぼくは頭が悪い。だからできないんだ」と思い込み、本来成長するはずの能力が縮こまっている。つまり、思い込みが脳を操作してしまっているんです。
金柿:「できない」のではなく「まだ能力を獲得していないだけなんだ」と思うだけで、気持ちの持ちようがガラッと変わりますね。
加藤:人間の脳は、思想や気持ち、周りの環境など、あらゆる状況に適応しようとして、常に形を変えていきます。だから「私は運動が苦手、できない」と思った瞬間、脳は「運動に必要な脳番地を働かせなくてもいい」と判断してしまう。「自分はすごい、やればできる」と思っていたら、それを実現できる能力を脳が作っていくんですよ。
金柿:僕は今まで、何かできないことがあると「得意じゃないから」とか「今さら自分の性格は変えられないから」と思っていたんです。でもそれこそが、脳の成長を止めていたんですね。
加藤:その通りです。年齢に関係なく、人の脳はすべて成長途中。今、高い能力を持っていても、継続的に育てなければ、能力は伸びません。よく、運動選手や音楽家が伸び悩んだときに「壁にぶち当たる」と表現しますが、原因は脳の壁でも才能の壁でもなく、単なる時間の問題です。諦めずに練習し続けていけば時間が進み、必ず脳の夢は叶っていきます。
私は、そういった脳に対する根本的な考え方を各年齢で変えたいと思って、この本を書きました。
金柿:10歳の子を対象にしたのは、なぜですか?
加藤:人間の脳は、イメージしたり観察したりする能力を持つ、右脳から成長していきます。後から、言語能力を持つ左脳が成長していって、ちょうど左右のバランスが取れる時期が9〜10歳。10歳は、どの方向にも自分の脳を変えていくことができる年齢なのです。
金柿:10歳でも、自分の脳について興味を持てるのでしょうか?
加藤:持てると思います。先日、実際にこの本を使って、インターナショナルスクールのグレード5(9〜10歳相当)の子どもたちに、脳の講義をしてきました。すると「どうしてゲームは脳に悪いの?」という質問を受けたんです。「ゲームに夢中になって睡眠時間が減ると、自分の体の中で寝ている時間と起きている時間をコントロールできなくなるからだよ」と答えましたが、10歳ぐらいでも自分の脳の出来事に興味があって、きちんとこちらの答えを理解する能力もあるんだなと感じました。
金柿:そうだったんですか。10歳で自分の脳について考えてみるだけでも、すごいことですよね。
加藤:私が望んでいるのも、そこなんです。脳の知識そのものというよりも、自分が脳のどこを伸ばしたいかと考えてくれるようになれば、十分じゃないかと。
例えば、スポーツ選手がみんな最初から特別な能力があるのかというと、そうではない。スポーツ選手は、運動系の脳番地をたくさん育てたから、選手として活躍することができているんだという認識を持つと、「じゃあ自分は、脳のどんなところを育てようかな?」と考えられるようになると思うんです。小さなころからそういう考えがあれば、できないことに対する悩みも解消され、未来への投資になるかなと。
金柿:「勉強しなさい」と言われると、反発したくなる気持ちになると思いますが、「こうすれば、自分の脳が育つんだよ」と言われると、わかりやすいし、やってみようという気持ちになるかもしれませんね。